福音派とはへそ曲がりのことである

アメリカのキリスト教を語る時に、よく「モンキー・トライアル（進化論裁判）」のことが言われます。ダーウィンが唱えた進化論は、人間はサルから進化した、と主張しています。しかしこの考えは、聖書の「創世記」に反します。創世記には、神は最初から人間を今ある状態に作ったのであってサルとは違う、と書かれています。

そこで福音派（聖書に書かれていることはすべて本当だと信じている人たち）は、学校が子供たちに進化論を教えることに反対していて、地方自治体を相手に裁判などをしています。

このような頑固なキリスト教信者がアメリカに多数いることに薄気味悪さを感じている日本人はたくさんいます。しかし調べてみると、実態は少し違うようなのです。彼らも進化論や生物学が科学であることは承知しています。そして、頑固に進化論を否定して世間から浮き上がるような人物に、自分の子供を育てようとも考えていないようです。

アメリカは、熱烈なプロテスタントが作った植民地からスタートしました。各植民地はその公定の宗派を持ち州立教会を作り、その宗派の教えに反する者たちを追放したり、はなはだしい場合には死刑にしたりしました。

このような宗派的な考え方に凝り固まったキリスト教の殻を打ち破ったのが、大覚醒運動です。その成果がアメリカ憲法の規定で、国家が特定の宗教の肩を持つことを禁止しています。アメリカ人は、国家が信仰に介入するのを極端に嫌うのです。

「神が人間を作ったのであって、サルが進化したわけではない」というのは、一つの信仰です。それが間違っており野蛮だと子供たちに教えるのは、信仰に自由に反して憲法違反だ、と福音派は考えているのです。

「福音派とは、聖書に書かれていることがそのまま真実だと思い込んでいる人だ」という説明を文字通りに理解すべきではなく、「福音派とはへそ曲がりの集団である」と解釈した方が実態にあっている気がします。

海岸に立って海の表面を見たら、水平線は直線で湾曲しているようには見えません。「地球は平らだという直感・情感を大事にしてどこが悪いのだ」、というのが福音派の発想です。