宗教はあくまでも個人的なものであり、キリスト教ももともとはこの原則を守っていました。自分の意志で「私は神を信じます」と宣言して洗礼を受け、信者になるべきはずのものです。ところが次第に「先祖代々の家の宗教」とでも言うべき発想が生まれ、カトリックで「幼児洗礼」という生まれたばかりの乳児を洗礼するという習慣が生まれました。
プロテスタントはこの「幼児洗礼」に反発し、原則としてこれを認めません。ところが幼児洗礼を頑固に認めないと、別の問題が発生します。キリスト教では洗礼を受けて信者にならなければ、絶対に天国に行けません。乳幼児死亡率が高かった時代には大問題です。
そこでとりあえずは「幼児洗礼」を認めたのですが、子供が15~16歳になった段階で「堅信礼」を行い、一人前の信者として認めることにしたのです。ところがこの堅信礼を受けるのは難しく、教会の信者の前で自分の信仰をきちんと説明して、試験にパスしなければならないのです。
堅信礼を受けられないで成人した者たちも、やがて結婚して子供が出来ます。ところが堅信礼を受けていない親から生まれた子供は、幼児洗礼が受けられないのです。幼児洗礼は、親が神に対して「この子を一人前のクリスチャンに育てます」と約束してから幼児に授けます。親は保証人なのです。従ってその保証人に信用がなければ、幼児洗礼を授けられません。
仕方がないので、教会は「半途契約」という制度を考え出しました。これは「今は修行中だが、将来は必ず立派な信仰を持つべく努力中である」という状態です。この制度によって、堅信礼を受けていない親から生まれた幼児も洗礼を受けられるようになりました。
とりあえず幼児洗礼の問題はクリアーしましたが、堅信礼を受けられず信用できない人間だと思われる劣等感は、相当なものでした。彼らは何とかして心からの悔い改めをして、一人前の信者として認められたいと願っていました。
ここまで幼児洗礼が問題になったのは、アメリカが非常に熱心なプロテスタントの移住から始まったからです。イギリスやカトリック諸国では、幼児洗礼はここまで大きな問題になっていませんでした。
以下はひと続きのシリーズです。
1月12日 戦後になって、アメリカはユダヤをえこひいきするようになった
1月13日 戦後、アメリカでユダヤ系の政治勢力が大幅に増大した
1月14日 アメリカのユダヤ人は、ロビー活動と政治資金で政治家を操っている
1月15日 アメリカ最大の政治勢力であるキリスト教福音派が、ユダヤ系と同盟した
1月16日 ユダヤ教とキリスト教の違いは、イエスを救済者と認めるか否か
1月18日 神様は、自分の力を見せつけるためにヨブを痛めつけた
1月19日 ヤハウェの神は、自分が全能であることを全世界に広めようとしている
1月21日 19世紀に多くのユダヤ人がロシアから逃げ出してアメリカに渡った
1月23日 ユダヤ人の社会主義者が、百年前からアメリカにたくさんいた
1月24日 ユダヤ人学者がアメリカの科学技術のレベルを上げた
1月27日 ユダヤ人は、最初は現地の人に歓迎されるがやがて嫌われる
1月28日 ポーランド政府は、ユダヤ系の自国民を見殺しにした
1月29日 第二次大戦後に、ポーランド人はユダヤ人を大虐殺した
2月2日 天変地異や核戦争でものすごい数の人類が死ぬ、と聖書は予言している
2月3日 アメリカは、聖書の予言を実現させるためにイスラエルを支援している
2月5日 イギリス国王は中途半端な宗派を強制し、プロテスタントを弾圧した
2月6日 メイフラワー号でやってきたピューリタンは、無許可で移住した
2月7日 初期には、本気で信仰を守るために移住してきた者も多かった
2月8日 大覚醒運動が起きたために、今でもアメリカではキリスト教が強い
2月9日 18世紀のアメリカでは、ちゃんとした信仰を持っていなければ劣等感にさいなまれた
2月10日 植民地時代のアメリカでは、社会的に活躍するにもちゃんとした信仰を持つ必要があった
2月11日 アメリカの州立教会の牧師は、難しい説教を長時間した
2月14日 巨大な教会(メガ・チャーチ)が続々と誕生している
2月16日 アメリカのキリスト教は、自己啓発産業になりつつある
2月25日 アメリカはプロテスタントの信仰によって老化が進んでいる