州立の立派な教会の牧師の説教は、総じて面白くありませんでした。また、このような教会は昔からその町に定住している信者たちをもっぱら相手にしていて、新しく町にやってきた移民たちのことをあまり考えていませんでした。見知らぬ土地にやってきて不安でいっぱいだった移民にとって、既存の州立教会は敷居が高かったのです。
新しくやってきた移民の宗教的ニーズを満たしたのは、巡回説教師でした。彼らの多くは大学の神学部で学んだわけではなく、ラテン語もできませんでした。州政府から給与がでるわけではないので、彼らの収入は説教集会で信者から得る献金しかありませんでした。
面白くなければ信者が集まらないので、巡回説教師は聴衆を惹きつける話術に磨きをかけました。したがって彼らの説教は非常に面白かったのです。彼らの巧みな話術に感動し、涙を流して悔い改める信者が続出しました。大覚醒運動の担い手は、主として素人の巡回説教師だったのです。
州立教会の牧師にとっては、巡回説教師は商売敵です。そのために巡回説教師は既存の教会を説教の会場に使えず、野外でやることが多かったのです。州立教会の牧師と巡回説教師は喧嘩をするようになりましたが、この勝負は最初から巡回説教師の勝ちに決まっていました。
キリスト教だけでなく宗教全般に、「人工的に築きあげた高慢な知性よりも、素朴で謙譲な無知の方が尊い」という基本認識があるからです。大覚醒運動の高まりと共に州立教会の牧師への信頼が低くなり、国家は宗教に介入してはならないという考え方が一般化しました。独立後に定められたアメリカの憲法は、国家が特定の宗教に肩入れするのを禁じています。
総じて巡回説教師の話は面白かったのですが、ホイットフィールドという巡回説教師の話はとりわけ面白かったそうです。ベンジャミン・フランクリン(独立戦争時に活躍した政治家で、嵐の時に凧を揚げて、雷の正体が電気であることを実証した科学者でもある)は、ホイットフィールドの評判を耳にして、その説教を聞きに行きました。
フランクリンは、「今日は絶対に、寄付を払わないぞ」と決心した上で、説教を聞きに行きました。ところがあまりに説教が面白かったため、ポケットに入っていた金貨や銀貨を洗いざらい、回ってきた献金皿に入れてしまったそうです。
以下はひと続きのシリーズです。
1月12日 戦後になって、アメリカはユダヤをえこひいきするようになった
1月13日 戦後、アメリカでユダヤ系の政治勢力が大幅に増大した
1月14日 アメリカのユダヤ人は、ロビー活動と政治資金で政治家を操っている
1月15日 アメリカ最大の政治勢力であるキリスト教福音派が、ユダヤ系と同盟した
1月16日 ユダヤ教とキリスト教の違いは、イエスを救済者と認めるか否か
1月18日 神様は、自分の力を見せつけるためにヨブを痛めつけた
1月19日 ヤハウェの神は、自分が全能であることを全世界に広めようとしている
1月21日 19世紀に多くのユダヤ人がロシアから逃げ出してアメリカに渡った
1月23日 ユダヤ人の社会主義者が、百年前からアメリカにたくさんいた
1月24日 ユダヤ人学者がアメリカの科学技術のレベルを上げた
1月27日 ユダヤ人は、最初は現地の人に歓迎されるがやがて嫌われる
1月28日 ポーランド政府は、ユダヤ系の自国民を見殺しにした
1月29日 第二次大戦後に、ポーランド人はユダヤ人を大虐殺した
2月2日 天変地異や核戦争でものすごい数の人類が死ぬ、と聖書は予言している
2月3日 アメリカは、聖書の予言を実現させるためにイスラエルを支援している
2月5日 イギリス国王は中途半端な宗派を強制し、プロテスタントを弾圧した
2月6日 メイフラワー号でやってきたピューリタンは、無許可で移住した
2月7日 初期には、本気で信仰を守るために移住してきた者も多かった
2月8日 大覚醒運動が起きたために、今でもアメリカではキリスト教が強い
2月9日 18世紀のアメリカでは、ちゃんとした信仰を持っていなければ劣等感にさいなまれた
2月10日 植民地時代のアメリカでは、社会的に活躍するにもちゃんとした信仰を持つ必要があった
2月11日 アメリカの州立教会の牧師は、難しい説教を長時間した
2月14日 巨大な教会(メガ・チャーチ)が続々と誕生している
2月16日 アメリカのキリスト教は、自己啓発産業になりつつある
2月25日 アメリカはプロテスタントの信仰によって老化が進んでいる