キリスト教から生まれたFreedomを、政府の要人が仏教の教義で解釈しておかしなことをした結果、多くの国民が「自由主義はだめだ」と考えてしまいました。これも昭和初期に社会主義が自由主義にとってかわった理由の一つです。
Freedomは、隣人愛を行え、という考え方です。キリスト教が教える「隣人」は人類全部を指していません。隣人は文字通りご近所の親しい人という意味です。つまりしょっちゅう顔を合わせ、あいさつし、言葉が通じ気心が通じている人のことです。西欧では、「同じキリスト教の宗派に属している人」という理解が一般的です。
19世紀に入って国民国家ができた後は、同じ言葉を話し同じ国籍の人をも隣人と考えるようになりました。宗教に関しては、カトリックでもプロテスタントでも、キリスト教徒でありさえすればOKになったのです。
ところが日本人の多くは、「肌の色が違っても言葉が違っても、みな同じ人間だ」「人類みな兄弟」と考えます。それは日本で普及している大乗仏教がこのように教えるからです。人間に個性があるように見えるのは幻であり、みんな同じなのだと考えます。それどころか、動植物や山川などと人間の区別もない、と考えます。このような教義は納得しがたい人が多いでしょうが、実際の日本人の発想はこの通りです。日本では人種差別は少ないし、自然との一体感は日本文化の特徴です。
「自由」というのは仏教用語です。だから日本人はこの言葉を仏教の教義で解釈し、その結果、「すべての人間に対し、勝手気ままに振舞うことを認めなければならないのだ」と思ったのです。そして、自由がFreedomの訳語だから、Freedomも同じなのだろう、と誤解したわけです。
以前、南京事件の時に幣原喜重郎外務大臣は、南京にいた日本人を守ろうとしなかった、ということを書きました。日本領事館を守る守備隊に発砲を禁止したため、多くの日本人が暴徒に殺され略奪され強姦されました。それでもこの外務大臣は支那に媚を売り続けました。
幣原喜重郎は、日本に敵対する支那人の暴徒も「同じ人間だから、勝手気ままに振舞うことも認めてやらなければならない」と考えたのです。これはFreedomとは全く異なる考え方です。このように日本人を助けようとしない政府が「自由主義」を唱えていたので、多くの日本人は自由主義という考え方に反感を持ち、社会主義に走ったのです。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと