ソ連は、間抜けな社会主義者を利用した

社会主義化した日本の軍人や官僚の大部分はソ連のスパイではなく、愛国者でした。しかしその考え方の基本的な部分がソ連のマルクス系社会主義と同じだったので、その主張もよく似ていました。

違うところは、マルクス系が私有財産を否定するのに対し、日本の軍人や官僚はこれを容認した点です。しかし、この違いはさほど大きなものではなく、政府が私企業に対して何を生産すべきかを指示すれば結局は同じことです。配当の制限などをすれば経済格差を縮小させることもできます。

戦時中、女性が華美な服装をすることを許さずモンペを着用させました。金を持っていてもそれを使うことができなかったわけで、これも格差解消策の一環です。またマルクス系は天皇陛下を認めませんが、日本の軍人や官僚は天皇陛下に忠誠を誓っていました。

ソ連は、私有財産と天皇陛下に関する相違についてはしばらく目をつぶり、日本経済の社会主義化(統制経済化)に目的を絞って進めるように日本にもぐりこんでいるスパイに指示しました。

尾崎秀実などのソ連のスパイの活動がどの程度効果があったのかははっきりしていません。しかし、多くの無邪気な社会主義者たちはソ連のスパイの提言に賛同することによって、無意識にソ連に協力しました。要するにFBIのフーバー長官が言う「間抜け」が日本にもたくさんいたわけです。

その「間抜け」とは、軍隊や官庁の中にいた社会主義者でした。支那を相手に戦っている限り、日本は負けるはずがありません。戦争を長引かせて、その間に戦時統制体制を作り、日本を社会主義化しよう、と考えたということです。

「間抜け」たちが想定したのは、支那と日本との戦争を長引かせることまでだったと思います。ところがソ連のスパイの尾崎秀実は、その先のアメリカとの戦争、さらには日本国内での革命まで考えていました。結局、事態は尾崎が想定したように進行しました。日本とアメリカは本当に戦争を始めたのです。

以下はひと続きのシリーズです。

4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる

4月7日 私有財産の否定は社会主義の条件ではない

4月9日 二つの大戦の間、多くの国が社会主義化した

4月11日 社会主義もFreedomから生まれた

4月14日 社会主義は独裁を志向する

4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない

4月18日 英米は、歴史的に仲が悪かった

4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった

4月23日 昭和初期には「間抜け」が大勢いた

4月25日 「右翼」「革新派」の多くは社会主義者だった

4月28日 ウィルソン大統領はソ連を助けた

4月30日  アメリカ嫌いの日本人が増えてきた

5月2日 日本は社会主義思想への対応を誤った

5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった

5月7日 青年将校は急激に社会主義化した

5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた

5月12日 ソ連が出した大金が、日本の軍人に渡った

5月14日 陸軍主流が、ソ連容認派になった

5月16日  国民は政党を見放し、軍人を支持した

5月19日 軍の幹部も社会主義化した

5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった

5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった

5月26日 ソ連のスパイが、近衛首相に政策提言をしていた

5月28日 近衛文麿は、多重人格者だった

5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた

6月2日 首相のブレインや官庁が、社会主義を主張していた

6月4日 支那との和平に社会主義者が反対した

6月6日 日本を社会主義化するために、戦争を利用した

6月9日 日本は、冷静な現状分析をしていなかった

6月11日 戦争を続けることが目的になった

6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した

6月16日 ソ連は、間抜けな社会主義者を利用した

6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない

6月20日 近衛上奏文には、本当のことが書かれていた

6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった

6月25日 日本は、関東大震災後のバブルへの対応を誤った

6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと

6月30日 「勝手気ままに金儲けする自由」では、社会主義に対抗できなかった

7月2日 隣人愛を誤解した外務大臣

7月4日 自由は、軍人にとって危険思想

7月7日 地獄への道は、善意で敷き詰められている

7月9日 朝日新聞は、社会主義を目指す

7月11日 国会が機能マヒしている

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