Freedom(自由主義)の考え方は、宗教改革が起きた16世紀初めにはすでにあり、500年以上の伝統があります。一方の社会主義は、フランス革命(1789年)後の19世紀になってその存在がはっきりしてきました。マルクスが『資本論』を書いたのは、1867年です。
18世紀までの西欧社会は、貴族と平民との間の身分の差や因習などの非経済的障害が大きかったので、経済を発展させるため、まずはFreedomの権利を確立させて非経済的障害を打破する必要がありました。
19世紀になって身分差別が解消され「ブルジョワ社会」ができると、今度は資本家と労働者という新たな階級が生まれました。そのために、経済的格差を解消するために、社会主義や共産主義という新しい思想が生まれたわけです。
このような経緯のため、社会主義の考え方はFreedomを基礎とし、それに修正を加えたものになっています。Freedomには、Passive freedom(消極的自由)とActive freedom(積極的自由)の二つの側面があります。
心正しくいかなる場合でも賢明な判断を下せる者に対してはうるさいことをごちゃごちゃ言わず、その主体性に任せます。これがPassive freedomです。一方、心が邪悪だったり、幼稚だったりするために、正しい判断ができない者たちに対して自主性を認めないというのがActive Freedomです。彼らに対しては、正しい判断を行う賢明な者が上から命令を下し、それを強制するのです。
イギリスの古典的なLiberalism(自由主義)は、イギリス人のほとんどはまじめなキリスト教徒だから、経済活動にしても政治活動にしても、その自主性に任せても大丈夫だと考えるわけです。国家の政策を多数決によって決めても正しい結論を出すものと信頼しているのです。議会制民主主義と自由主義はワンセットなのです。
社会主義は、資本主義の悪習に染まった多くの者は自分の利益をもっぱら図ると考えています。だから心正しく賢明な国家のリーダーが大衆に命令をするしかない、と考えます。これはPassive freedomの考え方からきています。このように社会主義もFreedomの考え方が基礎にあるので、ソ連の憲法もFreedomの権利を国民に保証しているのです(具体的中身は、欧米とはかなり違いますが)。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと