火薬は糞尿から作る

南蛮商人は、日本の若い男女を買い入れ、奴隷として世界中に売り歩きました。特に若い娘は火薬一樽の五十分の一というメチャクチャな値段で売られていました。

天正15年(1587年)、秀吉は九州を平定するために博多にやってきました。そこで日本人奴隷のことを聞き、激怒してガスパール・コエリュ(ポルトガル人の宣教師)を怒鳴りつけました。そのときに秀吉のお伽衆だった大村由己が次のように書いています。「日本人の男女を数百人も黒船へ買い取り、手足に鉄の鎖を付け、船底に追い入れ、地獄の苛責よりもひどい有様である。近所の日本人は、子を売り、親を売り、妻女を売った。」

以後、秀吉や江戸幕府は南蛮商人の日本人奴隷取引に文句を言い続け、何度も交渉を重ねましたが、最終的にスペイン人の来航を禁じたのが1624年、ポルトガル人の来航禁止は1639年で、その間に40年以上かかっています。ポルトガル人の種子島来航から数えたら、90年もかかっています。

南蛮貿易の利益が大きかったので秀吉も江戸幕府もその利益をあきらめられなかったからだ、と私は学校で教わりました。このような説の背景には、「支配者はみな悪党で、自分のことしか考えなかった」という思いこみがあります。

秀吉にも家康にも、「民百姓を守るのが自分の仕事である」という矜持がありました。しかし日本で火薬が作れなかったので、南蛮商人が欲しがる日本人奴隷と交換せざるを得なかったのです。

黒色火薬は、硝石75%・硫黄10%・木炭15%を混ぜて作ります。硫黄と木炭は日本にふんだんにありますが、日本人は硝石をどうやって作るのか知りませんでした。

アンモニアがバクテリアによって分解されて、硝酸になります。その硝酸が土の中のカルシウムと結合することで硝酸カリウムができます。硝酸カリウムを含んだ土を蒸留して、硝石の結晶を作るのです。そしてアンモニアは、人間や動物の糞尿に含まれています。そのことを日本人は知らなかったのです。

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コメント

  1. 加藤朗 より:

    「その硝酸が土の中のカルシウムと結合することで硝酸カリウムができます」は間違いです。できるのは硝酸カルシウムです。周夫さんカルシウムを硝酸カリウムにするには灰汁煮という方法が必要です。