社会主義は、資本主義社会の人間は利己的だから、心正しく賢明な国家のリーダーが大衆に命令をするしかない、と考えます。利己的な者たちが集まって多数決で出した結論より賢明な指導者の判断のほうが正しいということになるので、社会主義は民主主義(多数決)を敬遠し、独裁が好きです。
建前ではいまだに社会主義の中国で一番偉いのは、中国共産党という政党の中央政治局常務委員会(メンバーは習近平、李克強など7人います)です。この7人は社会主義という正しい思想を理解している賢明な者たちです。だからこの7人の決定に国家と全中国人が従うのです。この7人の選出は形式的には共産党の200人の幹部によって選出されることになっていますが、実質的には7人が自分たちの後継者を決めています。
日本共産党も同じような方法でトップを決めています。形式的には最高幹部の64人がトップ(日本共産党中央委員会委員長)を決めることになっていますが、実際は議長役を務める長老(不破哲三)が、「志位和夫君を委員長に推薦します」というと、全員がそれに賛同するのです。このように社会主義は、多数決を認めません。
今、立憲民主党や社民党・日本共産党などの社会主義政党は、国会内で「モリカケ」や「桜を見る会」などの追及ばかりでもっと重要な議論をせず、国民をうんざりさせています。「こんなことでは、国会に対する国民の信頼がなくなる。野党の議員たちはそんなこともわからない愚か者がそろっているのか」という批判が多く出ています。
ところが、「これが彼らの作戦なのだ」といううがった見方もあります。国民が議会制民主主義を信頼せず、ヒットラーやスターリンのような強いリーダーを求めるように仕向けているのだ、と考えるのです。ヒットラーが率いたナチス党の正式名称は「国家社会主義ドイツ労働者党」で社会主義政党なのです。スターリンも習近平も社会主義政党のトップです。
このように社会主義は、基本的に独裁政治を目指しています。だからこのようなうがった見方もあるいは当たっているかもしれません。彼らは社会主義を信奉しているので、無意識のうちに独裁志向になっているのかもしれません。
ロシアや中国など社会主義が長く続いた国は、独裁政治の伝統が強いです。独裁政治と社会主義は相性がいいのです。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと