Freedomというキリスト教の信仰から生まれた考え方を、明治初期の日本人は自由と訳しました。このことに関しては、このブログで何回となく説明してきました。キリスト教というのは、正しいことを行え、と説く正義の宗教です。そして神の教えが正義です。
キリスト教から生まれたFreedomも、神が指し示す正義の教えを守れ、と言っているだけです。神と同じ心を持っているキリスト教徒は正しいことしかしないから、自主性を尊重されます。邪悪な心の者は力づくで正しいことをさせられます。
Economic Freedom(経済の自由)もFreedomに基づいているので、「正しいことを行え、隣人を助けよ」というキリスト教の教えの制約を受けており、その範囲内でしか行動できません。
中村正直が書いた『自由之理(イギリス人が書いた自由論の翻訳)』の中でも、「国防の務めを果たさなければならない」と書いています。仲間を守るのが隣人愛の実践だからです。従って交戦中の敵国とビジネスを行うことはFreedomに違反するのです。アメリカの成功者はほとんど例外なく慈善事業を行っています。それは、Freedomが隣人愛の実践を命じているからです。
ところがFreedomを翻訳した「自由」という言葉には、正義という意味は含まれていません。ただ「他人を気にせず、勝手気ままに振舞ってもよい」というだけの意味です。したがって「自由主義経済」という言葉には、自分の国を守る愛国心とか弱者を助けるなどという「人助け」の気持ちが籠っていません。
「金儲けのためならば何をしても構わない」という考え方は、国家の大原則にはなれません。誰か正義を叫んで政府を攻撃してきたら、それに対して「自分は正しい」と主張して理論闘争をすることができないからです。
大日本帝国憲法は、Freedomを自由と訳してこれを規定しましたが、この訳語が適切でなかったために、「自由」というのが正義を含んでいる考え方だとは多くの国民は思いませんでした。そのために、「社会主義」という種類の違う正義が主張されたときに、それに対抗できなかったのです。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと