4月からこのブログで、「日本はなぜアメリカと戦争をしたのか」という理由を書いてきました。そして、昭和初期の日本は社会主義に染まっていたのが大きな原因だった、という結論を出しました。
他にも、支那や朝鮮と日本は同じ文化を共有するから互いに助け合わなければならない、という大アジア主義の幻想を持っていたというのも、理由の一つです。またアメリカがFreedomの考え方から日本人を人種差別したとか、当時のフランクリン。ルーズベルト大統領の側近にソ連のスパイがおり、対日戦を工作した、という理由もあります。しかし、日本が社会主義化したから、というのが大きな理由であることは否定できません。
そうなると、「なぜ日本はこのように簡単に社会主義化してしまったのか」という次なる疑問がわいてきます。第一次世界大戦後、世界中の列強が多かれ少なかれ社会主義化しました。もちろん、国ごとに歴史的な経緯や文化の違いがあるので、社会主義化もそれぞれに異なりますが、日本はほかの国に比べると、かなりスムーズにかなり重度に社会主義化してしまいました。
ドイツはもともと「何が正しいかは国家が決める」というヘーゲル哲学の伝統があった上に、議会を過剰に尊重したワイマール共和国の失敗により、ヒトラー総統に重大な判断をゆだねるという社会主義国家が生まれました。イギリス・フランスも第一次世界大戦時の統制経済により、社会主義的な世論が大きくなりました。
アメリカは第一次世界大戦に深く介入しなかったので、社会主義化は軽度でした。ソ連がアメリカの社会主義化を懸命に工作したため、民主党にスパイを送り込むことに成功しましたが、共和党は反社会主義の姿勢を維持し続けました。
日本は第一次世界大戦で被害を受けませんでした。戦後に戦争特需の反動で不況になったと説明されていますが、実際のGDPは横ばいになっただけで、落ち込んでいません。1929年の大恐慌の後もあまり落ち込んでいません。2・26事件が起きた1936年のGDPは1929年より20%以上増えています。一方のアメリカは5%減っています。
日本は第一次世界大戦の戦勝国で、東アジアで広大な勢力圏を持っていました。このように経済的状況だけを見ると、昭和初期の日本が急激に社会主義化する要因がないのです。しかしこの時期に、日本は大きく社会主義化しました。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと