前回までに説明したように、昭和初期の日本人は世界情勢を理解せず、ヘマばかりをしていました。日露戦争までの日本の指導者は非常に優秀だったのに、それから30年後には遺伝子が入れ替わったのではないかと疑うほど、日本人はバカになっていました。私だけでなく、多くの人が日本の為政者の急激な劣化に首を傾げています。
1990年代になって、第二次世界大戦前後の各国の機密情報が次々に公開されました。ソ連の崩壊により、その機密情報が公開されました。またアメリカもヴェノナ文書を公開しました。これは、1937年から1980年の間にアメリカ国内にいたソ連のスパイとソ連本国がやり取りした暗号を、アメリカとイギリスの諜報機関が共同で解読したものです。
これらの極秘情報の開示で分かってきたのは、アメリカや他の列強の政府がソ連のスパイや工作員によってかなり汚染されていた、ということでした。1950年代にアメリカの上院議員だったマッカーシーが、多くの政界有力者をスパイ容疑で告発しました。一時はアメリカの政界は騒然となりましたが、やがてこの告発はでっち上げだということになって収まりました。
ところがヴェノナ文書の公開によって、マッカーシーの告発のほとんどが真実だということが分かってきたのです。それ以後、アメリカではこれらの新しい資料によって、第二次世界大戦前後の歴史が大きく書き換えられました。日本と戦争を始めたルーズベルト大統領はソ連のスパイに踊らされていたということが明らかになってきました。今、アメリカ人の対日観は静かに変わりつつあります。
アメリカの歴史学会の変化に対応して、対日戦の責任はアメリカにあるという著書が翻訳されつつあります。以前は何かの圧力で翻訳出版がされなかったのです。
チャールズ・ビーアド:『ルーズベルトの責任 日米戦争はなぜ始まったのか』
ハーバート・フーバー:『裏切られた自由 フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症』
ハミルトン・フィッシュ:『ルーズベルトの開戦責任』など
私はこれらの本を夢中になって読みました。その結果、日米開戦は、コミンテルンの謀略による影響が大きいということがわかってきました。コミンテルンというのは、ソ連のスパイ・工作機関です。資本主義国どうしを戦わせて双方を疲弊させ、その混乱に乗じて革命を起こそうという謀略を行っていました。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと