私は永年にわたって、「日本はなぜアメリカと戦争をしたのか」を考え続けてきました。学校で教わった説明は、私を納得させることはできませんでした。
日本は資源がないので、領土や資源を保有するイギリスやアメリカに対して戦いを挑むしかなかった、という説明はおかしいです。日本は満州を勢力圏に収め、朝鮮・台湾・南樺太や南洋群島を領土にしていました。さらに中国の沿岸地方・ベトナムやモンゴルまで勢力を伸ばしていました。戦前の日本の勢力圏を示した地図を見るとその広大さに驚きます。大日本帝国は、まさに大帝国だったのです。
これらの勢力圏内には石油は出ないではないか、という反論があるかもしれません。しかし、インドネシアとブルネイに石油はありました。インドネシアはオランダの植民地でしたが、そのオランダが1940年(大東亜戦争勃発の前年)にドイツに占領されました。だから同盟国のドイツと話をつければ、石油は手に入ったのです。
ブルネイはイギリスの植民地でした。当時のイギリスはドイツと死に物狂いで戦っていたので、ブルネイに構っていられませんでした。もともとイギリスと日本はよい関係だったので、イギリスと戦わずに石油を手に入れる可能性もありました。アメリカが石油を日本に輸出することを禁止したからアメリカと戦争になった、というのは説明になっていません。
アメリカは日本をライバル視していたから、どんな難癖をつけてでも日本と戦争をしたはずだ、という説明も事実と違います。確かに民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領は日本と戦争をしようと躍起になっていましたが、日本のほうから攻撃しない限り彼は戦争することができませんでした。
ルーズベルト大統領は、大統領選挙中に「外国のほうから攻撃をしてこない限り、アメリカは戦争をしない」と公約していたからです。第一次世界大戦にアメリカは参戦しましたが、金と人命を浪費しただけで、得たものはほとんどありませんでした。だから一般のアメリカ人は対外戦争などしたくなかったのです。
共和党は、社会主義のソ連と対峙している日本に好意的でした。日本には、共和党と話をつける方法もあったのです。「中国から手を引かないとくず鉄と石油を売らないぞ」と脅かしてきた「ハル・ノート」をまともに考える必要など、なかったのです。
以下はひと続きのシリーズです。
4月4日 右翼・左翼という言葉を使うと、現実が分からなくなる
4月16日 アメリカが石油を禁輸したから戦争になった、というのは説明になっていない
4月21日 ソ連の工作機関が、アメリカを戦争に誘導していった
5月5日 金本位制復帰も、日本が社会主義化する大きな要因だった
5月9日 反乱を起こした青年将校は、社会主義者を指導者に仰いでいた
5月21日 日本共産党員も獄中転向し、非マルクス系の社会主義者になった
5月23日 天皇制を認めれば、社会主義を信奉してもOKになった
5月30日 ソ連のスパイの尾崎秀実は、支那事変拡大を煽り立てた
6月13日 憲法が規定する自由主義の原則を、国の役所が否定した
6月18日 軍国主義者や右翼が悪い、というのは説明になっていない
6月23日 昭和初期の日本の経済には、社会主義化するような必然性はなかった
6月27日 日本が社会主義化した大きな原因は、Freedomが輸入品だったこと