アメリカは自由貿易を標ぼうしており、WTO(自由貿易を促進する国際機関)にも加盟しています。そのアメリカが昨年、支那からの輸入品に対して、WTOが定めた低い関税率の適用を拒否し、10%~25%の高い関税を課しました。
アメリカは、支那との貿易に関しては、自由貿易の原則を適用しないことにしたわけです。このアメリカの態度は、何であれFreedom(自由)を大切にするアメリカの考え方と矛盾するのではないか、という疑問が沸いてきます。実はアメリカのこのやり方は、自由を原則に掲げながら黒人奴隷を合法としたり、大東亜戦争が始まると日系人を強制収容所に閉じ込めたりした考え方と、共通しています。
このような二面性が、キリスト教の信仰から来たFreedomの特長です。キリスト教は、人間の心の中には欲望が渦巻いているために、神が定めた律法を守ることができないと考えています。しかし人間がイエスを信じれば、イエスはその人物を神様に推薦します。
すると、神はイエスから推薦を受けた人間に息を吹きかけて、自分の心の一部をその人物の心に付着させるのです。その結果、その人物の心が正しくなります。彼はどういう状況においても正しい判断が出来るので、自由にさせても問題がありません。
しかしイエスを信じない人間の心は邪悪なままなので、野放しにすることは危険です。そこでそのような邪悪な人物には自由を認めず、強制的に教育をしなければなりません。
黒人を奴隷にして強制的に労働をさせ、日系人を強制収容したのには、このような理論的背景があります。同様にアメリカが支那人に対して自由に貿易させるのを拒否したのも、支那人の心が邪悪だと判断したからです。
昨年、アメリカが支那に対して高関税を課した根拠は、アメリカの通商法が規定するスーパー301条です。この条文には、「貿易相手国の不公正な取引慣行に対しては、高関税を課すことが出来る」と書かれています。
支那人はイエスを信じない邪悪な者たちだから、彼らには自由を認めない、ということなのです。日本人の多くはアメリカ人のFreedomの考え方を理解していないので、スーパー301条の規定を「強者が身勝手なことをしている」とだけ思っています。
以下はひと続きのシリーズです。
4月9日 支那の国有企業が民営化すれば、共産党政権が崩壊し、伝統文化が傷つく
4月11日 支那の伝統を破壊するまでは、アメリカの目的は達せられない
4月12日 アメリカのスーパー301条は、邪悪な者には自由を認めない、という法律
4月15日 支那との付き合いが短い国が、支那の危険性に目覚めている
4月17日 支那の皇帝陛下は、日本の天皇陛下に手紙を出せない
4月18日 江戸時代の日本人は、支那を「聖人の国」だ、と誤解した
4月23日 支那は、自国民も外国人も守ろうとせず、略奪をする
4月26日 大アジア主義は、江戸時代の社会体制を前提として考え出された
5月1日 外務大臣が、英米のFreedomの原則を理解していなかった
5月3日 金解禁によって日本は恐慌になり、国民は政党を信用しなくなった
5月6日 満州事変以後、軍人たちは中央の言うことを聞かなくなった
5月7日 元老、重臣、財閥、官僚、政党政治家は、みんな悪党だ
5月8日 軍人が行ったテロから、日本人は「赤穂浪士の討ち入り」を連想した
5月11日 軍人は、大アジア主義の発想から、支那本土で軍事作戦を行った
5月12日 日本軍が支那本土で軍事作戦をしたために、アメリカとの関係が悪化した