大アジア主義を詳しく知ろうとして、私は文献を探しましたが、これについて書かれた本は多くありませんでした。大アジア主義は日本の世論を大いに動かしましたが、政府の外交文書にはっきりと書かれていません。だから学者としては、研究しづらいのです。
有名大学の教授や学長の書いた大アジア主義に関する数少ない文献を読んでみましたが、その内容にがっかりしました。「大アジア主義は、日本のアジア侵略を正当化した思想だ」と言っているだけなのです。こんなことを書くだけで教授や学長になれるのだったら、近代史の学者というのは楽なものだな、と思いました。
これらの著書には、大きな欠陥があります。大アジア主義は、日本の独立が脅かされた危機の時代に生まれたものです。どのような日本の思想的背景(及び、日本人の対外的な無知)と社会的状況から、このような考え方が生まれたのかを、まずは知らなければなりません。
ところがこういうことに触れた本がほとんどなく、いきなり明治時代の大アジア主義者の説明から始まるのです。こんな本を書いた学者は、本当のことを知ろうとしているのではなく、「日本は悪いことをした」と言いたいだけのように見えます。
侵略というのは、一つの国家が別の国家に仕掛ける行為です。では支那に国家などというものがあったのでしょうか。そういうことも考えなければなりませんが、学者たちがそういう検討をした形跡がありません。
国家は、その国民の安全と財産を守るだけでなく、合法的に滞在している外国人の安全と財産をも守らなければなりません。ところが支那の支配者は伝統的に、派閥争いに熱心で、自国民や外国人を守ろうなどと考えていませんでした。
支那の官憲が信用できないので、欧米列強や日本は自国民保護のために租界を作り、その中を自国の軍隊と警察及び裁判所で守っていました。遠い外国に軍隊を駐屯させ官僚組織を維持するのは費用が掛かるので、どこの国もやりたくありません。イギリスが日英同盟を結んだ理由のひとつがこれです。日本は支那に近いので、日本と同盟を結べば、イギリスの東アジアでの兵力不足を日本軍がカバーしてくれるのです。
支那の中で安全な場所は租界の中だけなので、大勢の支那人たちも租界に移り住みました。
以下はひと続きのシリーズです。
4月9日 支那の国有企業が民営化すれば、共産党政権が崩壊し、伝統文化が傷つく
4月11日 支那の伝統を破壊するまでは、アメリカの目的は達せられない
4月12日 アメリカのスーパー301条は、邪悪な者には自由を認めない、という法律
4月15日 支那との付き合いが短い国が、支那の危険性に目覚めている
4月17日 支那の皇帝陛下は、日本の天皇陛下に手紙を出せない
4月18日 江戸時代の日本人は、支那を「聖人の国」だ、と誤解した
4月23日 支那は、自国民も外国人も守ろうとせず、略奪をする
4月26日 大アジア主義は、江戸時代の社会体制を前提として考え出された
5月1日 外務大臣が、英米のFreedomの原則を理解していなかった
5月3日 金解禁によって日本は恐慌になり、国民は政党を信用しなくなった
5月6日 満州事変以後、軍人たちは中央の言うことを聞かなくなった
5月7日 元老、重臣、財閥、官僚、政党政治家は、みんな悪党だ
5月8日 軍人が行ったテロから、日本人は「赤穂浪士の討ち入り」を連想した
5月11日 軍人は、大アジア主義の発想から、支那本土で軍事作戦を行った
5月12日 日本軍が支那本土で軍事作戦をしたために、アメリカとの関係が悪化した