「企業は社会的公器」という考え方が怪しくなってきた

大アジア主義についてブログに記事を書いているうちに、「最近の企業の経営者の考え方が小さくなっている」という思いを新たにしました。「昔はよかった」ということを書くと年寄りくさいですが、私がこのような印象を持ったのは30年ぐらい前で、決して最近のことではありません。

私が働きだしたのは1970年代に入ってからですが、その頃はすでに高度成長期は終わっていました。日本の大企業が本当にエネルギッシュだったのは、1970年代前半に起きたオイルショックの頃まででした。外国から技術導入をし、その技術を自分のものにしてその後の技術革新の土台を作ったのはこの頃です。また、欧米や東南アジアに現地法人を作って海外市場を開拓したのもこの頃です。

1970年代後半からバブルが崩壊するまでの間は、そのやり方を延長して日本の企業は成長を続けました。そしてバブル崩壊後は、日本の経済は成長が止まり、足踏みをしています。このようなことになった理由は色々あるでしょうが、それを誰もが納得のいくように解明することは難しいです。

ただ漠然と、企業の経営者のスケールが小さくなった、私は永い間感じていただけでした。ところが最近になって、経営者の能力に問題があって名だたる大企業がおかしくなった実例が続出しました。

東芝はウェスチングハウスの買収が原因で業績が悪化し、「サザエさん」のスポンサーから降りるほど経営が苦しくなり、それを隠すために粉飾決算をしました。ニッサンやスバルは資格のない者に検査をさせました。さらにニッサンの日本人経営者たちは、ゴーンさんが会社を食い物にしたことをずっと隠蔽していました。

神戸製鋼・三菱自動車は試験データを改ざんしました。極めつけはKYBの免震装置の検査データ改ざんで、これにより首都直下型地震や東南海地震に高層ビルが耐えられるか否か、不安になってきました。

企業も人間と同じように「法人格」という人格を持っているがゆえに、人間と同じように良き市民として社会的責任を果たさなければならない、というのが「企業は社会的公器」という考え方です。これが怪しくなってきたのです。

以下はひと続きのシリーズです。

5月17日 「企業は社会的公器」という考え方が怪しくなってきた

5月18日 経団連はもともと、天下国家を論じる組織だった

5月19日 陸奥宗光は、自由主義に基づいて富国強兵策を実践した

5月20日 明治初期の日本人は、自由主義を原則としていた

5月21日 『自由之理』を読んで、日本人はFreedomの考え方を知った

5月22日 民主主義の時代になると、多数派から少数派を守ることが重要になる

5月23日 ミルは、子供や未開人には自由はない、と主張している

5月24日 日本の独立には、文明国になること、Freedomを認めることが不可欠だった

5月25日 他者を益する行為を人に強制することは、正しい

5月26日 ミルは、Freedomの考え方とキリスト教の関連を断とうとした

5月27日 ミルは、キリスト教も他の宗教と同じく完全ではない、と考えた

5月28日 ミルは、キリスト教徒以外にもFreedomを認めた

5月29日 日本人が学んだのは、キリスト教を消したFreedomの考え方

5月30日 Freedomはキリスト教の本質である

5月31日 ルターは、カトリックの修道士になったが、教義に疑問を感じた

6月1日 ルターは、キリスト教は他力本願だ、と主張した

6月2日 イエス・キリストを信じるだけでいい

6月3日 イエスを信じたら、もはや律法を気にする必要はない

6月4日 心正しいキリスト教徒に限って、律法を破っても良い場合がある

6月5日 ルターの「律法からの自由」とミルのFreedomは同じ考え方である

6月6日 バーリンは、積極的自由を否定した

6月7日 バーリンのように、積極的自由を否定するのがこれまでの主流だった

6月8日 明治初期の政府は、税金を投入して自由主義経済を育てた

6月9日 自由競争は、優れた者にだけ適用される

6月10日 経団連の幹部は、自由を誤解している

6月11日 Freedomの誤解と大アジア主義の幻想の根底には、大乗仏教がある

6月12日 大乗仏教は、民族の違いなどなく、勝手気ままな態度が正しい、と教える

6月13日 経団連幹部は、自由主義経済を大乗仏教の教義で解釈している

6月14日 出家しているはずの僧侶が、俗世に関わるようになった

6月15日 Freedomを自由と訳したのは、一種の神仏習合

6月16日 神様の息には、命が含まれている

6月17日 キリスト教も神道も、神は自分の魂を人間に付着させて心を正しくする

6月18日 Freedomは、日本語に訳さないほうが良いかもしれない

6月19日 アメリカは、Freedomが原因でエネルギーを浪費している

6月20日 日本人は誠の意味をきちんと理解し、誠のない国から日本を守らなければならない