アメリカは、Freedomが原因でエネルギーを浪費している

Freedomという考え方は、近代社会を切り開き、国民を豊かで安全にする立派な考え方だと、私は思っています。

しかし、Freedomという考え方も、完全ではありません。「野蛮人にはFreedomはない。彼らにはルールを厳格に適用し、強制して教育すべきだ」という「積極的自由」の考え方は一種の劇薬であって、使う量を間違えると大変な結果を生みます。

このような過激な考え方は、旧約聖書から生まれたのではないか、と私は考えています。旧約聖書には、神がユダヤ人に対して「異教徒を皆殺しにせよ」と命令する場面がたくさんあります。16世紀に南米に攻め込んだスペイン人や17世紀以降のアメリカ人は、聖書の言葉に従って、原住民を文字通り「皆殺し」にしました。

西欧で迫害されたプロテスタントが、アメリカに逃げてきて「本物のキリスト教徒の国」を作ろうとしました。その子孫がアメリカ人ですから、自分たちだけが正しいキリスト教徒であり、他の連中は「邪悪な野蛮人」だと思っています。

だから、アメリカは「積極的な自由」の考え方から、戦争ばかりしています。南北戦争・米西戦争・第一次世界大戦・第二次世界大戦・朝鮮戦争・ベトナム戦争・イラク戦争・テロとの戦いなどキリがありません。

日本人は、アメリカに原爆を落とされ、東京を大空襲され、全部で300万人も殺されたことを忘れていません。ところがその事実をアメリカ人に折に触れて思い出させようとする日本の政治家はいません。子供への教育でも「原爆を落とされたのは日本が悪かったからだ」という説明をしています。

お互いに信頼するということは、過去に敵対したことをお互いに素直に認めることですが、日米関係はそうなっておらず、アメリカに用心深く対処しています。日本人はいまだに、アメリカのやった事に納得していないようです。

アメリカは本来豊かな国です。ところがFreedomの考え方から戦争ばかりしていて、エネルギーを浪費し、他民族の恨みを買っています。またFreedomの考え方から、人種差別と宗教差別を行っているために、アメリカ人自体が分裂する傾向にあります。

以下はひと続きのシリーズです。

5月17日 「企業は社会的公器」という考え方が怪しくなってきた

5月18日 経団連はもともと、天下国家を論じる組織だった

5月19日 陸奥宗光は、自由主義に基づいて富国強兵策を実践した

5月20日 明治初期の日本人は、自由主義を原則としていた

5月21日 『自由之理』を読んで、日本人はFreedomの考え方を知った

5月22日 民主主義の時代になると、多数派から少数派を守ることが重要になる

5月23日 ミルは、子供や未開人には自由はない、と主張している

5月24日 日本の独立には、文明国になること、Freedomを認めることが不可欠だった

5月25日 他者を益する行為を人に強制することは、正しい

5月26日 ミルは、Freedomの考え方とキリスト教の関連を断とうとした

5月27日 ミルは、キリスト教も他の宗教と同じく完全ではない、と考えた

5月28日 ミルは、キリスト教徒以外にもFreedomを認めた

5月29日 日本人が学んだのは、キリスト教を消したFreedomの考え方

5月30日 Freedomはキリスト教の本質である

5月31日 ルターは、カトリックの修道士になったが、教義に疑問を感じた

6月1日 ルターは、キリスト教は他力本願だ、と主張した

6月2日 イエス・キリストを信じるだけでいい

6月3日 イエスを信じたら、もはや律法を気にする必要はない

6月4日 心正しいキリスト教徒に限って、律法を破っても良い場合がある

6月5日 ルターの「律法からの自由」とミルのFreedomは同じ考え方である

6月6日 バーリンは、積極的自由を否定した

6月7日 バーリンのように、積極的自由を否定するのがこれまでの主流だった

6月8日 明治初期の政府は、税金を投入して自由主義経済を育てた

6月9日 自由競争は、優れた者にだけ適用される

6月10日 経団連の幹部は、自由を誤解している

6月11日 Freedomの誤解と大アジア主義の幻想の根底には、大乗仏教がある

6月12日 大乗仏教は、民族の違いなどなく、勝手気ままな態度が正しい、と教える

6月13日 経団連幹部は、自由主義経済を大乗仏教の教義で解釈している

6月14日 出家しているはずの僧侶が、俗世に関わるようになった

6月15日 Freedomを自由と訳したのは、一種の神仏習合

6月16日 神様の息には、命が含まれている

6月17日 キリスト教も神道も、神は自分の魂を人間に付着させて心を正しくする

6月18日 Freedomは、日本語に訳さないほうが良いかもしれない

6月19日 アメリカは、Freedomが原因でエネルギーを浪費している

6月20日 日本人は誠の意味をきちんと理解し、誠のない国から日本を守らなければならない