経団連の幹部が支那に対してまともな対応が出来ないのは、Freedomの意味を誤解しているからですが、大アジア主義の伝統に捉われているからでもあります。
「日本と支那・朝鮮は、儒教や仏教を信奉し同じ文字を使う。文化が共通しているから、お互いに理解できる。この三者は連携して欧米に対抗しなければならない」という幕末にできた誤った考え方によって、日本は戦争に負けるというひどい目に遭いました。
それでもまだ多くの日本人は、大アジア主義の幻想から目を覚ましません。この弱点を支那に読まれ、さらにハニートラップなどの奸計にかかり、支那に深入りする経済人が実に多くいます。
このようにFreedomに対する誤解と大アジア主義という幻想のために、日本人は支那の深みにはまってしまっています。実はFreedomの誤解と大アジア主義の幻想の根底には、共に大乗仏教があります。
明治初期に日本人は、Freedomというキリスト教の信仰から生まれた言葉の訳語に、自由という言葉をあてましたが、これは仏教用語だったのです。そのために日本人はFreedomを仏教の発想で理解するという誤りを犯しました。
大アジア主義は、「日本と支那・朝鮮は文化が共通している」という誤解から生まれていますが、その中には「日本と支那・朝鮮は共に仏教を信仰している」という誤解も含まれています。確かに日本に大乗仏教が入ってきた奈良時代・平安時代には、支那や朝鮮では仏教が栄えていました。
日本は、遣唐使に従って行き来した僧侶などを通じて、仏教の教義を支那から輸入しました。しかし、9世紀終わりに唐が衰えたので、日本は遣唐使を廃止しました。そのために以後、日本には支那に関する生の情報が入ってこなくなりました。
日本が遣唐使を廃止した直後に支那の仏教は急激に衰えました。しかしその時には日本に生の情報が入らなかったため、日本人はその後も支那で仏教が栄えている、と誤解しっぱなしになっているのです。
以下はひと続きのシリーズです。
5月17日 「企業は社会的公器」という考え方が怪しくなってきた
5月19日 陸奥宗光は、自由主義に基づいて富国強兵策を実践した
5月21日 『自由之理』を読んで、日本人はFreedomの考え方を知った
5月22日 民主主義の時代になると、多数派から少数派を守ることが重要になる
5月23日 ミルは、子供や未開人には自由はない、と主張している
5月24日 日本の独立には、文明国になること、Freedomを認めることが不可欠だった
5月26日 ミルは、Freedomの考え方とキリスト教の関連を断とうとした
5月27日 ミルは、キリスト教も他の宗教と同じく完全ではない、と考えた
5月28日 ミルは、キリスト教徒以外にもFreedomを認めた
5月29日 日本人が学んだのは、キリスト教を消したFreedomの考え方
5月31日 ルターは、カトリックの修道士になったが、教義に疑問を感じた
6月4日 心正しいキリスト教徒に限って、律法を破っても良い場合がある
6月5日 ルターの「律法からの自由」とミルのFreedomは同じ考え方である
6月7日 バーリンのように、積極的自由を否定するのがこれまでの主流だった
6月8日 明治初期の政府は、税金を投入して自由主義経済を育てた
6月11日 Freedomの誤解と大アジア主義の幻想の根底には、大乗仏教がある
6月12日 大乗仏教は、民族の違いなどなく、勝手気ままな態度が正しい、と教える
6月13日 経団連幹部は、自由主義経済を大乗仏教の教義で解釈している
6月14日 出家しているはずの僧侶が、俗世に関わるようになった
6月15日 Freedomを自由と訳したのは、一種の神仏習合
6月17日 キリスト教も神道も、神は自分の魂を人間に付着させて心を正しくする
6月18日 Freedomは、日本語に訳さないほうが良いかもしれない