消費税が10%に値上げされたのは昨年の10月ですが、これを決めたのは民主党政権でした。今から8年前の2012年に民主党政権は、消費税値上げを確実に実施するために、消費税法を改正して、将来の値上げを明記したのです。
民主党は、さまざまな政党が離合集散を繰り返した後に1998年にできた政党です。結党当初は社会主義的な傾向は強くなかったのですが、国民の期待は「自民党に対抗できる大きな野党」というものでした。この国民の期待に応えようとして、民主党は次第に野党のマインドを強くして、結果的に社会主義化しました。
野党が指定席のはずの民主党が偶然政権を担うようになり、失政を重ねて政権を維持できなくなり、衆議院の解散をせざるをえなくなりました。この時に野田首相は、野党である自民党の安倍晋三総裁と取引し、衆議院を解散する代わりに、消費税の増税を認めよと迫りました。安倍晋三総裁がこの取引を承知して衆議院が解散され、以後自民党が政権を担っています。
消費税を値上げすれば日本が不況になることは、誰でも分かっていました。それでも政府や議会は消費税の値上げを決めました。なぜこのようなことになったのか、について多くの意見がありますが、集約すると下記のようになります。
1、財務省設置法の第3条は、「財務省は、健全な財政の確保を図ることを任務とする」と規定していて、大きな財政赤字を出すことが法律で禁止されている。つまり、政府は財源を確保するためには増税しなければならないことになっている。素人集団である民主党の政治家たちは、財務省の官僚たちにうまく載せられた。なお、財務省に改変される前の大蔵省の設置法には、このような規定はなかった。
2、税金を多く徴収した財務官僚が評価され出世している。税金の徴収は、国家が政策を実現するための資金を確保する手段のはずである。しかし、財務省の中では徴税が目的になっている。そして増税に対する抵抗を弱めるために、わざと「国の借金は1000兆円を超えている。このままでは日本は財政破綻する」と言って、国民の不安を煽っている。実際には日本には多額の資産があり、特に日銀は数百兆円の資産を保有している。従って、国の借金と資産を相殺すれば、実質的な国の借金はゼロになる。
上記二つの説明は、その通りだと思います。しかし、もう一つの理由があります。小泉内閣で経済財政政策担当大臣を務めた竹中平蔵慶応大学教授は、『日本経済のシナリオ』という本の中で、「非常に多くの日本人が、不思議なことに、これ以上日本は豊かにならなくても良い、と考えている」ということを書いています。他にも多くの経済学者たちが、「日本の経済を再び成長させようとする政策の障害になっているのが、これ以上日本は豊かにならなくても良い、という世論だ」と指摘しています。
大乗仏教は、ものに執着することに反対し、全てのものを捨てて出家することを推奨しています。今の日本人が、「これ以上日本は豊かにならなくても良い」というのは、まさに大乗仏教の発想から来ているのです。
以下はひと続きのシリーズです。
8月1日 1970年と1989年が、戦後のターニングポイント
8月4日 1970年頃から、電車の中で座席を譲らないようになった
8月6日 席を譲らなくなったのは、自由の考え方が強まったから
8月13日 日本を占領したアメリカ軍の幹部に社会主義者が大勢いた
8月20日 占領軍の社会主義者は、日本の軍人や官僚とは別系統だった
8月22日 アメリカ占領軍は、マルクス系社会主義を持ち込んだ
9月3日 Freedomを自由と訳したから、社会主義が仏教化した
9月10日 フランスの学生は、大乗仏教に影響されて大学紛争を起こした
9月12日 日本の学生は、フランス製の仏教思想によって、大学紛争を起こした