子供のころに感じた疑問は大切である

大東亜戦争後の現代の社会を、宗教という視点から読み解いて行こうと、私は考えています。

私が高校に入ってから50年以上経っています。私の父親は徴兵されて兵隊になっていますし、母親は敗戦直前の東京大空襲を経験しています。だから、私の両親の経験も含めれば、戦後の75年間は自分自身が生きて経験している時代なのです。

「自分で経験しているのだから、私の言うことに間違いはない」などと、主張する気はありません。むしろその逆で、「あの時は何にも分からなかった。私だけでなく、周囲の大人も本当のことを知らされていなかったなあ」という思いがたくさんあります。

例えば、1960年安保がそうです。このとき私は小学生に入ったところでしたが、ものすごい数のデモ隊が国会を取り囲んでいる有様をテレビで見ていました。私は、一緒にテレビを見ていた大人たちに、「なぜデモ隊は安保に反対しているのだ」と聞いてみましたが、大人たちもその理由が分からないようでした。当時テレビがない家の人は、隣の家にテレビを見に来たのです。

私は長い間、なぜ学生や大人たちが安保にあれだけ激しく反対したのか、岸信介首相がなぜデモ隊に屈しなかったのか、という疑問を胸の中で温め続けていました。後に小室直樹が、「学生運動の指導者たちは、誰一人として安保条約を読んでいなかった」と書いているのを読んで、永年の疑問が晴れました。

当時、小室直樹はアメリカに留学していたのですが、安保反対運動の学生指導者たちが訪米したので、小室直樹が彼らに会って、安保に反対する理由を聞いたところ、彼らが安保条約を読んでおらず、中身をまるで理解していないことを知って愕然としたのです。

学生運動の指導者たちは、社会主義に染まっていたため、A級戦犯だった岸信介がやることだから悪いことに違いない、と思い込んでいたのです。また、その相手がアメリカ帝国主義なので、安保を改正したら日本はまた戦争をすると思ったのです。1960年の安保条約の改正は、敗戦直後の条約を日本に有利なように改正したものだったので、条文をまじめに読めば、あのような反対運動は起きなかったはずです。

子供というのは意外に鋭いもので、納得できないことを無理やり自分に納得させるという大人の知恵がありません。子供時代に「何か変だ。ウソがある」と感じたことの多くは、実際に変なのです。実際に体験したことが貴重なのは、このような「何かがおかしい」という感覚ができるからです。

私が子供のころに「何かがおかしい」と感じたことを、次回以後もいくつか紹介したいと思います。

以下はひと続きのシリーズです。

7月14日 現代を宗教で読み解く

7月16日 宗教を本気で考える習慣が消えてしまった

7月18日 学校や家庭で、宗教を教えなくなった

7月21日 日本語に仏教用語が入り込んでいる

7月23日 神道の言葉も日本語に入っている

7月25日 社会を「科学的方法」で分析するのは難しい

7月28日 子供のころに感じた疑問は大切である

7月30日 ベトナム戦争の報道にも疑問を感じた

8月1日 1970年と1989年が、戦後のターニングポイント

8月4日 1970年頃から、電車の中で座席を譲らないようになった

8月6日 席を譲らなくなったのは、自由の考え方が強まったから

8月8日 日本人も、年功序列は問題があると思っている

8月11日 年功序列は仏教の発想

8月13日 日本を占領したアメリカ軍の幹部に社会主義者が大勢いた

8月15日 天皇制廃止は占領軍の社会主義政策

8月18日 言論統制も農地解放も占領軍の社会主義政策

8月20日 占領軍の社会主義者は、日本の軍人や官僚とは別系統だった

8月22日 アメリカ占領軍は、マルクス系社会主義を持ち込んだ

8月25日 戦後、日本は激しく大乗仏教化している

8月27日 戦後、神道の勢力が衰えた

8月29日 戦後、国籍や民族の違いを認めないようになった

9月1日 自虐は、大乗仏教と社会主義から来ている

9月3日 Freedomを自由と訳したから、社会主義が仏教化した

9月5日 「国家は悪いことをする」は仏教の発想

9月8日 1960年代に、日本の社会主義は大乗仏教化した

9月10日 フランスの学生は、大乗仏教に影響されて大学紛争を起こした

9月12日 日本の学生は、フランス製の仏教思想によって、大学紛争を起こした

9月15日 消費増税は、大乗仏教の発想からきた

9月17日 神道や仏教の知識がないから、日本の大乗仏教化に気づかない

9月19日 日本国憲法も、日本の大乗仏教化を促進した

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