神道の言葉も日本語に入っている

仏教的な発想だけでなく、神道の発想も日本語に入り込んでいます。例えば、「春の息吹」「心の触れ合い」「誠」などがそうです。以前、キリスト教と神道の宗教的構造がよく似ているという話をしましたが、「春の息吹」がまさにそれです。

キリスト教の構造というのは、人間とイエス・キリストと神の三角関係です。人間がイエス・キリストを信じると、イエスはその人間を神に推薦します。そうしたら神はその人間に向かって自分の息を吹きかけますが、その息の中に神の魂が含まれています。

キリスト教は、神の息の中に含まれている神の魂を「聖霊」と言っていますが、原語では「息」とか「風」の意味です。息の中に含まれた神の魂が人間の魂に付着して、その人間の魂が強く正しくなるのです。このような人間は正しいことしかしなくなるので、ルールをうるさく言わずその自主性に任せます。これがFreedomの考え方です。

キリスト教と同じ発想が神道にもあります。これが「タマフリ(魂触り)」です。神の魂を自分の魂に付着させて、自分の魂を強く正しくする神事のことです。神道の方がキリスト教よりもう少し発想の幅が広く、人間だけでなく、自然にも神の魂が付着すると考えます。また「カミ」という日本語は、神様以外にも、上司とか主君、スターなど自分より優れている者すべてを指します。

冬になると野山は生命力を失いますが、神が息を吹きかけると野山が神の魂から力を受け取って生き返り、春が来ます。これが春の息吹です。

日本人は「心の触れ合い」という言葉が大好きで、全国いたるところに「触れ合い広場」があります。これは「タマフリの神事」と同じ発想で、互いに尊敬する人の魂を自分の心に付着させ、元気になろうということです。

東北大震災の時、被災者を元気づけようとして、多くのスターやスポーツ選手が被災地を訪れてパーフォーマンスを行いました。これを見た多くの被災者たちは、「元気をもらった」と喜びました。これはまさに、「心の触れ合い」であり「タマフリの神事」と同じです。

神の魂を付着させて自分の魂を強く正しくした者は、自分のことを優先せず仲間のことを考える無私の心境になります。その結果、何が正しいのかという判断ができるようになります。そして正しいことを行うのです。これが誠の考え方で、Freedomとよく似ています。

このように、神道の発想が日本語に入り込んでおり、これによって日本人の行動は知らず知らずのうちに神道的になっています。

多くの企業は、その敷地内や社屋の屋上に神社を祭っています。特に、松下幸之助が起こしたパナソニック(松下電機産業)は、本支店や各地の工場に神社を祀っていました。そして全国にあるこれらの神社を専門に祀る神主が、会社の役員の中にいました。また、松下幸之助は、死後に「松下幸之助社」の祭神に祀られました。

神社は田植え・堤防の修理など村全体の生産活動の中心になっていて、村民の間の共同作業の中心になっていました。一揆を起こすときにも、神様に起請文を書いて村民の団結を図りました。神社とその氏子たちが共同体を作っていたのです。そして共同体の中で自分の役割を果たすという役目の考え方が生まれました。

このような神道の考え方に基づいた共同体の運営の仕方が、そのまま日本の企業の経営に受け継がれています。そもそも日本の企業はその組織に、「本社」「支社」という神社の名称を使っています。

神道用語だけでなく、現在の企業組織の運営の仕方にも神道の信仰が入り込んでいます。なお、労働と神道の結びつきについては、後で詳しく説明しようと思います。

以下はひと続きのシリーズです。

7月14日 現代を宗教で読み解く

7月16日 宗教を本気で考える習慣が消えてしまった

7月18日 学校や家庭で、宗教を教えなくなった

7月21日 日本語に仏教用語が入り込んでいる

7月23日 神道の言葉も日本語に入っている

7月25日 社会を「科学的方法」で分析するのは難しい

7月28日 子供のころに感じた疑問は大切である

7月30日 ベトナム戦争の報道にも疑問を感じた

8月1日 1970年と1989年が、戦後のターニングポイント

8月4日 1970年頃から、電車の中で座席を譲らないようになった

8月6日 席を譲らなくなったのは、自由の考え方が強まったから

8月8日 日本人も、年功序列は問題があると思っている

8月11日 年功序列は仏教の発想

8月13日 日本を占領したアメリカ軍の幹部に社会主義者が大勢いた

8月15日 天皇制廃止は占領軍の社会主義政策

8月18日 言論統制も農地解放も占領軍の社会主義政策

8月20日 占領軍の社会主義者は、日本の軍人や官僚とは別系統だった

8月22日 アメリカ占領軍は、マルクス系社会主義を持ち込んだ

8月25日 戦後、日本は激しく大乗仏教化している

8月27日 戦後、神道の勢力が衰えた

8月29日 戦後、国籍や民族の違いを認めないようになった

9月1日 自虐は、大乗仏教と社会主義から来ている

9月3日 Freedomを自由と訳したから、社会主義が仏教化した

9月5日 「国家は悪いことをする」は仏教の発想

9月8日 1960年代に、日本の社会主義は大乗仏教化した

9月10日 フランスの学生は、大乗仏教に影響されて大学紛争を起こした

9月12日 日本の学生は、フランス製の仏教思想によって、大学紛争を起こした

9月15日 消費増税は、大乗仏教の発想からきた

9月17日 神道や仏教の知識がないから、日本の大乗仏教化に気づかない

9月19日 日本国憲法も、日本の大乗仏教化を促進した

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