前回までのブログで、昭和初期に日本は失敗した、という話をしました。①大アジア主義にのめりこんだ、②社会主義への対応を誤った、 ③人種差別への対応を誤った、という三つのミスを重ねたためにアメリカと戦争になり、負けてしまいました。
三つのミスの根底には、Freedomという考え方を当時の日本人が誤解していた、ということがあります。Freedomという考え方はキリスト教の信仰から生まれました。これを明治初期の日本人は自由と訳しましたが、この言葉はもともと仏教用語です。従って日本人はキリスト教の信仰を、まったく発想が異なる仏教の教義で解釈するようになりました。
アメリカという国家の大原則はFreedomです。だからアメリカ人は、Freedomの考え方に基づいて国際関係を考えます。そのアメリカの行動を日本人は自由という全く違う視点から考えてアメリカの意図を誤解したために、両者に軋轢が生じました。日本とアメリカの間の戦争の原因をたどっていくと、宗教的な原因に突き当たります。
では、戦後の世界はどうかというと、相変わらず宗教的な考え方を軸にして動いています。アメリカは相変わらずFreedomの考え方で行動しているし、中近東諸国はイスラム教とユダヤ教の対立を軸にして動いています。
マスコミが海外の状況を説明するときに、宗教的背景を説明しているので、日本人は世界が宗教によって動いていることを漠然と知っています。しかしほとんどの日本人は宗教に対する知識がないので、宗教的背景を実感できないでいます。
一方、日本国内で起きていることに宗教的背景があることを、ほとんどの日本人は気づいていません。しかし日本人は、歴史的にかなり宗教的な民族です。平安時代から戦国時代にかけて多くの名僧が仏の教えを説いていました。
幕末から明治維新にかけて、神道に基づいて明治維新を成し遂げました。このような日本人が宗教的であるという性格はいまだに変わっておりません。ただ、今の日本人がこのことに気づいていないだけなのです。
世界や日本で日々起きつつある事件には、宗教的背景があります。私はこれから、現代を宗教で読み解いていきます。
以下はひと続きのシリーズです。
8月1日 1970年と1989年が、戦後のターニングポイント
8月4日 1970年頃から、電車の中で座席を譲らないようになった
8月6日 席を譲らなくなったのは、自由の考え方が強まったから
8月13日 日本を占領したアメリカ軍の幹部に社会主義者が大勢いた
8月20日 占領軍の社会主義者は、日本の軍人や官僚とは別系統だった
8月22日 アメリカ占領軍は、マルクス系社会主義を持ち込んだ
9月3日 Freedomを自由と訳したから、社会主義が仏教化した
9月10日 フランスの学生は、大乗仏教に影響されて大学紛争を起こした
9月12日 日本の学生は、フランス製の仏教思想によって、大学紛争を起こした