日本は、大正時代ごろから社会主義が広まりだしましたが、政府の弾圧によってマルクス系の日本共産党の組織が壊滅し、非マルクス系の社会主義が主流になりました。そして多くのの軍人や官僚が社会主義を信奉するようになりました。非マルクス系の社会主義を信奉していた官僚は「革新官僚」と呼ばれていました。例えば、1960年安保の時の首相だった岸信介は、戦前は革新官僚でした。
日本の敗戦後、アメリカ占領軍は非マルクス系の社会主義者である軍人や官僚たちを「軍国主義者」「反動」と考えて、政府から追放しました。そして自分たちと考え方が近い日本共産党員を刑務所から釈放して支援し、日本のマルクス系社会主義化を推進しました。
しかし世界情勢の変化から、アメリカ占領軍は極端な社会主義化政策を緩和し、日本をほどほどの社会主義にするにとどめました。そして1952年に日本の占領が解除されました。
アメリカ占領軍が日本に押し付けた社会主義は、マルクス系の社会主義です。そしてこれは、キリスト教のFreedomから派生したものです。
Freedomは、「イエス・キリストを信じる者は心が正しいので、自主性に任せても正しいことしかしない。イエスを信じない者は心が正しくないので、彼らの自主的に任せることはできない。彼らには正しいことを強制しなければならない」、という考え方です。
マルクス系の社会主義は、このようなFreedomのこの基本構造はそのままにして、イエス・キリストを、マルクスが主張する歴史哲学に読み換えました。「歴史哲学を信じる党の指導者は、正しいことしかしない。このような賢人が歴史哲学を信じない愚かな大衆に対し、正しいことを強制する」ということです。
圧倒的に多数の日本人はキリスト教の信仰を持たず、その知識もないために、Freedomの考え方の構造が理解できていません。そのために、アメリカ占領軍が置き土産として残していったマルクス系社会主義は理解されずに、次第に日本化していきました。
日本の伝統的な発想は、神道と大乗仏教の二つの宗教の系列があります。マルクス系社会主義は、主として大乗仏教の系列の影響を受けて日本化しました。
以下はひと続きのシリーズです。
8月1日 1970年と1989年が、戦後のターニングポイント
8月4日 1970年頃から、電車の中で座席を譲らないようになった
8月6日 席を譲らなくなったのは、自由の考え方が強まったから
8月13日 日本を占領したアメリカ軍の幹部に社会主義者が大勢いた
8月20日 占領軍の社会主義者は、日本の軍人や官僚とは別系統だった
8月22日 アメリカ占領軍は、マルクス系社会主義を持ち込んだ
9月3日 Freedomを自由と訳したから、社会主義が仏教化した
9月10日 フランスの学生は、大乗仏教に影響されて大学紛争を起こした
9月12日 日本の学生は、フランス製の仏教思想によって、大学紛争を起こした