日本の社会主義が大乗仏教化したのは、1960年頃ではないでしょうか。1960年安保の時に反対運動の中心になったのが全学連(全国学生自治会総連合)でした。この全学連は各大学の自治会の連合組織です。1948年に設立され、当初は日本共産党が支配していたマルクス系社会主義の組織でした。
ところが1950年代の半ば頃から新左翼が支配的になりました。新左翼の主張は、「アメリカ帝国主義と日本帝国主義が悪い」、ということです。要するに、「国家は悪いことをする」ということで、大乗仏教の発想です。
1960年安保のリーダーたちは、安保条約の条文を読んでおらず、従来の条約がどのように改訂されるのか、分かっていませんでした。ただアメリカ帝国主義と結託する岸信介はA級戦犯だからで悪い奴に違いない、ということを考えていただけです。まさにアメリカと日本という二つの国家が悪いことをしようとしていたわけです。
私より10歳ぐらい年上の女性の友人がいるのですが、彼女が早稲田大学の学生だった時、「朝日ジャーナル」を持っていたら、才媛として丁重に扱われたそうです。この雑誌は朝日新聞が1959年~1992年まで発行していて、1960年代の日本に圧倒的な影響力を持っていました。私の父も購読していたのですが、これを読まなければ職場で相手にされなかったのでしょう。
朝日新聞と言えば、従軍慰安婦問題を捏造するなど、「国家は悪いことをする」という考え方から、憲法改正に反対しています。また、1960年代には、ベトナム戦争に関して、アメリカ帝国主義が弱小なベトナムを植民地にしようとしている、という論旨の記事を載せていました。
余談ですが、朝日新聞の名物記者だった本多勝一は、ベトナム戦争がたけなわのころに私が通っていた高校にやってきて、アメリカ軍がベトナムでどんなに悪いことをしているのかを、演説していました。
朝日新聞はまさに大乗仏教系の社会主義新聞なのですが、1970年代までは読売新聞より発行部数が多く、日本の世論を形成していました。1960年代の日本社会は、大乗仏教系社会主義の勢力がかなり強かったのです。
以下はひと続きのシリーズです。
8月1日 1970年と1989年が、戦後のターニングポイント
8月4日 1970年頃から、電車の中で座席を譲らないようになった
8月6日 席を譲らなくなったのは、自由の考え方が強まったから
8月13日 日本を占領したアメリカ軍の幹部に社会主義者が大勢いた
8月20日 占領軍の社会主義者は、日本の軍人や官僚とは別系統だった
8月22日 アメリカ占領軍は、マルクス系社会主義を持ち込んだ
9月3日 Freedomを自由と訳したから、社会主義が仏教化した
9月10日 フランスの学生は、大乗仏教に影響されて大学紛争を起こした
9月12日 日本の学生は、フランス製の仏教思想によって、大学紛争を起こした