支那では、2500年ぐらい前の春秋戦国時代に徐々に国家組織が出来てきました。これらの国家の支配者たちは、領内の宗族を何とかして国家権力に従わせようとしました。このような需要に答えようとしたのが、孔子、韓非子などの諸子百家でした。彼らは一種の政治哲学者です。
国家権力と宗族の妥協を図ったのが孔子でした。つまり、忠(国家への義務を果たす)という道徳と、孝(宗族を大事にする)という道徳の共存を主張したのです。儒教が「忠孝」とうるさく言うのは、こういうことです。
では、忠と孝が両立しない場合はどっちを優先するべきか、という問題が生じます。この問題には、儒教で孔子の次に偉い学者である孟子が答えています。孟子は『孟子』という書物を書きましたが、これは孟子とその弟子たちとの間の質疑応答集です。この中の「尽心」という章では、下記のようなやり取りが記されています。
弟子、「皇帝の父親が殺人を行って逮捕され、皇帝の下に引っ立てられてきたとします。犯人の息子である皇帝は、どうすべきでしょうか。皇帝は国家への義務を果たさなければなりません(忠)。すなわち、皇帝は統治者として父親を罰しなければならないのです。ところが、父親を罰するのは孝の教えに反します」
孟子、「まず皇帝の職を辞任して庶民になりなさい。その後に父親を背負って国家権力が及ばない辺境に逃げ、父親を養いなさい」。忠より孝を優先すべしと教えるのです。
忠より孝を優先するというのは、儒教だけの教えではなく、支那人の常識です。支那では、国家の一大事というときでさえ、親の訃報が届くと、喪に服するために休暇を取って故郷に帰ります。これが孝なのです。国家がどうなるかということより宗族に奉仕する方が大事なのです。
支那の高官たちの汚職のすさまじさは、皆さんもよくご存じだろうと思います。汚職で兆単位の財産を作った者はゴロゴロいます。江沢民の財産は50兆円~100兆円ぐらいだと言われています。彼らは、宗族の若い者をアメリカに留学させて永住権を取らせます。そして自分の財産をアメリカに送金して、彼らに管理させるのです。まさに、忠よりも孝を優先しています。その結果、他人が汚職で苦しんでも意に介しません。支那では派閥争いが激しく、いつ自分の生命や財産が奪われるかもしれません。そういう時のために、財産と宗族を守るために、財産と宗族をアメリカに移しておくのです。
これまでの説明で分かるように、支那人には、「血縁関係になくても同じ信仰や文化を持つ者を仲間として迎え入れて集団を作る」という考え方がありません。これではFreedomや誠の考え方が生まれるはずがありません。
「仲間同士で助け合う」という考えがないので、「仲間を助けるためであれば、社会的ルールを破っても良い」という考えが生まれるはずがありません。支那人が社会的ルールを破るのは、自分や宗族の利益を図るためです。このように支那人にはFreedomや誠を生み出す条件が二つともありません。
7月にアメリカのポンペオ国務長官が、「アメリカは、支那が豊かになればFreedomに目覚めるだろうと考えて様々な支援をしてきた。しかしこの政策は失敗だった」と言いました。まさにこのことを言っているのです。
以下はひと続きのシリーズです。
9月24日 自分が正しいと思っているから、アメリカは戦争ばかりする
9月26日 南部は、北部の文化の押し売りを嫌がって、南北戦争を起こした
9月29日 アメリカ人の、「自分は正しい」という発想は根強い
10月13日 トランプは、共和党の中のネオコンと戦って大統領になった
10月15日 トランプは、「メリー・クリスマス」にこだわった
10月17日 トランプの「アメリカ・ファースト」はFreedom
10月22日 ユダヤ人のほとんどは、アメリカとイスラエルに住んでいる
10月24日 第二次大戦後にアメリカはイスラエルを特別扱いし始めた
10月27日 「聖書の予言は必ず実現する」とアメリカの福音派は思った
10月29日 8000万人のアメリカ人が最後の審判を信じている