イスラム教諸国には、産業が高度に発展しているとか、先端技術の開発が盛んだ、などという先進国はありません。フランス革命・アメリカ独立戦争・明治維新に匹敵するような革命を成し遂げて近代国家を作った、という経験もありません。
欧米や日本を近代国家に押し上げたのは、Freedom及び誠の考え方です。これらの考え方には、以下の二つの要素が含まれています。
1、仲間どうしで助け合う
2、正しいことを行うのであれば、社会的な法律やルールを破っても構わない
幕末の日本人は、欧米からの圧力に対して日本の独立を維持しようという正しいことを行いました。これを実現するには従来の社会的な法体系(幕府が日本の政治を行う)やルール(士農工商の身分がある)を打ち破りました。これらの考え方を導き出したのが、誠の考え方だったのです。
明治維新後に日本政府は、文明開化政策を行ってFreedomを日本に導入しました。明治初期の日本人はこの考え方を正確に理解して受容することができましたが、それは誠というFreedomとよく似た考え方がすでにあったからです。その結果、日本は近代国家を作ることが出来ました。
実は日本と同じように文明開化政策を行った中東のイスラム教国があります。それがトルコです。16世紀に最盛期を迎えたオスマン・トルコ帝国は、19世紀にはロシアや他の西欧諸国に圧迫され、版図の中の少数民族の離反が相次ぎ、衰退しはじめました。
トルコ人も、自国を近代化するにはFreedomとEqualityの考え方を導入するしかないということが分かっていました。そこで1876年(明治9年)、ベルギーの憲法を参考にした憲法を作ったのです。ところがうまく機能せずに二年後にその効力を停止しました。イスラム教には、Freedomと似た考え方がなかったので、Freedomを使いこなせなかったからです。
伊藤博文が大日本帝国憲法を作ろうとして西欧に勉強に行ったとき、西欧の学者や政治家はトルコの例を出して、「キリスト教が普及していない日本では、憲法の導入は無理だ」と忠告しました。
イスラム教は、信者どうしが助け合うことを強調する宗教です。だからFreedom及び誠の考え方のうち、「仲間どうしで助け合う」という要素はあるのです。しかし、「正しいことを行うのであれば、社会的な法律やルールを破っても構わない」という考え方が欠けているのです。
以下はひと続きのシリーズです。
9月24日 自分が正しいと思っているから、アメリカは戦争ばかりする
9月26日 南部は、北部の文化の押し売りを嫌がって、南北戦争を起こした
9月29日 アメリカ人の、「自分は正しい」という発想は根強い
10月13日 トランプは、共和党の中のネオコンと戦って大統領になった
10月15日 トランプは、「メリー・クリスマス」にこだわった
10月17日 トランプの「アメリカ・ファースト」はFreedom
10月22日 ユダヤ人のほとんどは、アメリカとイスラエルに住んでいる
10月24日 第二次大戦後にアメリカはイスラエルを特別扱いし始めた
10月27日 「聖書の予言は必ず実現する」とアメリカの福音派は思った
10月29日 8000万人のアメリカ人が最後の審判を信じている
コメント
アメリカ人の多数派はfreedomを「他人から信仰を強制されないこと」と受け取っており、むしろ「キリスト教からの自由」と言う観点からfreedomの語を使用しているようにも見えますね。
語源はキリスト教の信仰生活の中にあったのかもしれないが、今や無神論者ですら己の立場を弁護するものとしてfreedomと言っている。
「多数派に神意が宿る」理論からすると、今回《神》はキリスト教原理主義者より社会主義者を選んだと言うことになり、原理主義的な考え方は己の信じる神から否定された形になる。この矛盾を克服するよい方法が一つだけあって、それが「選挙に不正があった理論」
この立場だと「多数派に神が宿る理論」も「神は熱心なクリスチャンを助ける理論」も救うことが出来る。本来は買っていたのに「無神論者が不正をしたから負けたんだ」「不正を暴くことが正義」となる。