前回までアメリカを例にとって、世界中に最も大きな影響を与えている宗教であるキリスト教を説明してきました。これから、次に影響力の大きい宗教であるイスラム教について、書いて行こうと思います。そうは思ったのですが、正直言ってイスラム教のことはよくわかりません。
本を読んでも、現地のモスクでイスラム法学者の話を聞いても、イスラム教がとうとう分かりませんでした。現地で生活をすることができないので、イスラム教が現実社会でどのような役割を果たしているかを知ることができないのです。
いろいろ考えた末に、どうやらイスラム教には二つの特徴がありそうだということだけは、分かってきました。
1、スンニー派とシーア派の対立は、教義の違いが原因ではない
2、イスラム教にはFreedomや誠に相当する考え方がない
最初にスンニー派とシーア派の違いの話をします。中東を論じる場合、必ず二つの宗派の対立の話が出ます。この二つの宗派は、宗派の指導者の選出方法が違うのです。アラーの神の属性が違うとか。礼拝の方法が違うとかいうことはありません。
イスラム教を興したマホメット(ムハンマド)は、アラビア半島に住んでいた遊牧民です。遊牧民の指導者は実力主義で、血統は基本的にはどうでもよい話です。ところが元気のよい男がすべて候補者になると、部族中で大乱闘が起こって収拾がつかなくなります。そこで、特定の一族の男子の中で実力のある者に限定するというルールになりました。モンゴル族は、ジンギスカンの子孫の中で優秀な者を指導者に選出しました。クリルタイという会議を開いて後継者を選定したのです。
イスラム教帝国も、同じやり方になるはずでした。ところがマホメットには娘しかいなかったので、マホメットが所属するクライシュ一族の中から選出することになりました。このやり方を採用したのがスンニー派です。一方、クライシュ一族の中でもマホメットの娘(ファティマ)の夫(アリー)の子孫に指導者を限定する、としたのがシーア派です。
スンニー派の指導者選出方法は遊牧民の伝統通りなので、広くイスラム社会で支持されています(イスラム教徒の8割がスンニー派)。一方、シーア派はイランとその周辺にいるだけです。
以下はひと続きのシリーズです。
9月24日 自分が正しいと思っているから、アメリカは戦争ばかりする
9月26日 南部は、北部の文化の押し売りを嫌がって、南北戦争を起こした
9月29日 アメリカ人の、「自分は正しい」という発想は根強い
10月13日 トランプは、共和党の中のネオコンと戦って大統領になった
10月15日 トランプは、「メリー・クリスマス」にこだわった
10月17日 トランプの「アメリカ・ファースト」はFreedom
10月22日 ユダヤ人のほとんどは、アメリカとイスラエルに住んでいる
10月24日 第二次大戦後にアメリカはイスラエルを特別扱いし始めた
10月27日 「聖書の予言は必ず実現する」とアメリカの福音派は思った
10月29日 8000万人のアメリカ人が最後の審判を信じている