今のアメリカを考えるうえで無視できないのは、アメリカとイスラエルとの間の超親密な関係です。このような関係は第二次世界大戦の時まではありませんでした。なぜならば、イスラエル共和国が出来たのは第二次世界大戦が終わってから3年後の1948年だからです。
ユダヤ人は世界中で1500万人ぐらいいますが、そのうちイスラエルに住んでいるのが600万人、アメリカに600万人で、残りの300万人内、フランスに50万人、カナダとイギリスがそれぞれ40万人弱、ロシアが20万人弱です。
ユダヤ人が生まれ故郷を追い出されて世界中に散らばっているというのは過去の話で、今は特定の国に集中しているので、ユダヤ問題を考えるときは、イスラエル、アメリカと中東だけを見ればおおよそのことは分かります。
19世紀末まで、アメリカにユダヤ人はほとんどいませんでしたが、19世紀末にロシア帝国が自国内に住んでいるユダヤ人を虐殺するなど大弾圧(ポグロム)したので、大勢がアメリカに逃げてきました。ブロードウェイのミュージカルに『屋根の上のヴァイオリン弾き』というのがありますが、このポグロムに遭ったユダヤ人家族の物語です。
今、アメリカに住んでいるユダヤ人の大部分は、この時にロシアから逃げてきた者たちの子孫です。西欧ほどではありませんが、アメリカ人はユダヤ人を差別していました。1930年代にナチスのドイツがユダヤ人を迫害すると、多くのヨーロッパ大陸に住んでいたユダヤ人はアメリカへの移住を希望しました。しかし、アメリカは移住を認めませんでした。
当時のアメリカは、国ごとに移住者の人数を決めていました。ちなみに日本の移住枠はゼロでした。ユダヤ人はそれぞれの西欧諸国の国籍を持っていたので、それを超過したユダヤ人をいくら西欧で迫害されていたからと言って特別扱いしなかったということです。
ただし、アインシュタインなどアメリカに有益なノーベル賞級の少数の科学者だけは例外で、移住を許可しました。第二次世界大戦の時までは、アメリカは決してユダヤ人を特別扱いしなかったのです。そして、キリスト教徒であるアメリカ人のユダヤ人差別もありました。
以下はひと続きのシリーズです。
9月24日 自分が正しいと思っているから、アメリカは戦争ばかりする
9月26日 南部は、北部の文化の押し売りを嫌がって、南北戦争を起こした
9月29日 アメリカ人の、「自分は正しい」という発想は根強い
10月13日 トランプは、共和党の中のネオコンと戦って大統領になった
10月15日 トランプは、「メリー・クリスマス」にこだわった
10月17日 トランプの「アメリカ・ファースト」はFreedom
10月22日 ユダヤ人のほとんどは、アメリカとイスラエルに住んでいる
10月24日 第二次大戦後にアメリカはイスラエルを特別扱いし始めた
10月27日 「聖書の予言は必ず実現する」とアメリカの福音派は思った
10月29日 8000万人のアメリカ人が最後の審判を信じている