アメリカと支那の間で冷戦がはじまると、支那は日本に対して今までよりももっと激しく宣伝戦を仕掛けてきます。私は、今のままでは日本はその攻勢に耐えられないのではないか、と心配しています。
支那は王朝の末期になると社会が乱れ、群雄が割拠して互いに天下を争います。自然発生した群雄を配下に組み入れて勢力を大きくした者が天下を制します。そこから広く天下に向かって、「自分は公正で仁義を守る。それに対してあいつは極悪非道で、配下になっても用が済んだら殺されてしまうぞ」とあることないことを宣伝するわけです。
『史記』は、漢王朝を創設した劉邦が張良という宣伝戦に通じたブレインを使いこなして、天下をとったということを詳しく書いています。劉邦のライバルだった項羽は、范増というブレインを使いこなせなかったために、戦闘の指揮官としては非常に優秀だったのにもかかわらず劉邦にやられてしまいました。
『三国志』は、弱小だった劉備玄徳には諸葛孔明という宣伝戦がうまかった軍師がついていたために、なんとか持ちこたえることができた、と書いてあります。そのライバルだった曹操にも司馬懿仲達という軍師がいましたが、諸葛孔明の方が有能だったので、曹操は劉備玄徳を滅ぼすことができませんでした。
要するに、支那では各群雄が「自分こそは人格者であり、帝王にふさわしい。他の連中はみなやくざだ」と宣伝して天下を争っていました。支那は2000年以上前から、宣伝戦が盛んだったのです。
ところが日本には天皇陛下がおられるので、群雄が天下を争うということがありませんでした。戦国時代にそのような状況が生まれかけましたが数十年で天下が統一されたため、宣伝戦の発想が日本に定着しませんでした。
日本では古くから支那の歴史書が読まれていました。特に江戸時代にはほとんどの武士が、儒教の本と共に『史記』や『資治通鑑』などを読んでいました。ところが日本人には宣伝戦の発想がないので、その部分に注目しませんでした。
以下はひと続きのシリーズです。
4月8日 5月に、トランプ大統領と金委員長が首脳会談をすることになった
4月9日 トランプ大統領は、とりあえず習近平に北朝鮮を抑えさせようとした
4月10日 トランプ大統領は、支那を外して直接北朝鮮と交渉し、核を放棄させようとしている
4月11日 最近まで、アメリカ人は支那をかわいそうな国だと思っていた
4月13日 支那は豊かになることによって自由な社会を作る、とアメリカ人は勘違いした
4月14日 支那に買われたアメリカの政治家やマスメディアは、今後もトランプ大統領に反対し続けるだろう
4月19日 アメリカと支那の冷戦がはじまると、支那が日本に仕掛ける宣伝戦はもっと激しくなる
4月20日 今のままでは、日本は支那の宣伝戦に耐えられそうにない
4月21日 日本は明治になるまで、支那の宣伝戦を経験しなかった
4月22日 日本人も外国人も同じ人間である、と思い込む習性が日本人にはある
4月24日 大乗仏教の影響で、日本人はウソの宣伝戦に騙されやすい
4月25日 支那の宣伝戦は、「国家は悪いことをする」と考える日本人の弱点を突いてくる
4月29日 憲法の本質的な議論を60年間避け続けてきたツケを、今ごろ払っている
5月1日 北朝鮮の核開発リスクは、従来からあるリスクにもう一つ追加されただけ