大乗仏教の信仰自体は、1300年前から日本にありますが、明治維新が神道の思想に基づいて成し遂げられたため、戦前までは大乗仏教の影響力は今ほど強くありませんでした。敗戦の時に、「日本が戦争をして敗けてしまったのは、神道のせいだ」という誤解が広がり神道の影響力が低下して、その代わりに仏教の影響力が拡大してきたのです。
ものを所有すること自体が良くないと考える大乗仏教は、非常に特殊な宗教です。神道もキリスト教も儒教も、ものを所有すること自体が悪いとは考えていません。ただ盗んだり騙したりして、ものを不正な手段で得ることが良くない、と教えているだけです。
プロテスタントなどは、「神が定めた仕事を通じて人を助けなさい」と教えています。客が喜ぶようなビジネスをすれば儲かるのは当然で、アメリカなどでは「ビジネスで成功した人は正しい信仰を持った立派な人だ」とまで考えられています。
また大乗仏教は地域的にも限定されていて、主要国の中で普及している国は日本だけです。インドの仏教は、12世紀末に消滅しました。支那や朝鮮の仏教は衰えてしまい、国民の心に大きな影響を与えていません。
アメリカ・西欧・支那・インドなどの主要国は、この20年間に大きく経済成長し、ひとり日本だけが成長できませんでした。それは主要国の中で大乗仏教の影響を強く受けている国は日本だけだからであり、特に戦後はその傾向が強くなっているからです。
明治維新は神道の思想を基にして成し遂げられたため、幕末から戦前までは日本は神道の影響を強く受けていて、大乗仏教の考え方は社会の表面に出てきませんでした。神道はキリスト教と考え方がよく似ているため、戦前の日本は欧米同様に経済的に発展することができました。
戦前は仏教の影響力が今ほど強くなかったため、「日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい」などという大乗仏教の発想は、社会の表面に出てきませんでした。
だから昭和5年(1930年)に始めた金本位制の復活が大失敗に終わり日本経済がますますひどい状態に陥ったら、2年足らずのうちに方針を転換して経済を成長軌道に戻すことができました。
以下はひと続きのシリーズです。
10月4日 穏やかなインフレになれば、経済は自然に良くなっていく
10月6日 プラザ合意で、為替を本当の変動相場制にすることにした
10月7日 日本には、お金じゃぶじゃぶ政策しか残されていなかった
10月8日 お金じゃぶじゃぶ政策は、欧米では当たり前の政策だった
10月9日 19世紀末から20世紀前半は、金本位制が優れた制度だと考えられていた
10月11日 高橋是清は、経済は集団心理で動く、と理解していた
10月12日 経済は集団心理で動くのに、経済学はそれを数字で説明しようとする
10月13日 経済活動は、その民族の伝統的な考え方に大きく影響されている
10月14日 『男子の本懐』はデフレを深刻にした金本位制復活がテーマ
10月15日 2014年の消費税値上げにより、アベノミクスがとん挫した
10月17日 白川日銀総裁は、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否した
10月18日 日銀がお金じゃぶじゃぶ政策を採用しなかったのは、国民が「日本はもう経済成長しなくても良い」と考えたから
10月19日 20年以上日本経済が停滞したのは、大乗仏教が原因