国会議員にとっては選挙に勝つことが全てなので、選挙民の意向を無視することはできません。選挙民が「日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい」と考えるのであれば、よほどしっかりした政治家以外はその線に沿って行動します。
政治家が「日本は経済成長するはずがない」と言っていれば、財務省も日銀もその考えに沿って実務を行って行かざるをえません。結局バブル崩壊後20年以上日本が経済成長しなかったのは、多くの国民が日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい」と考えたからです。
高齢化が進めば医療費や福祉費用が増大していきます。経済が成長しないとなれば、消費税を値上げして財政破たんを回避するしかありません。財務省が「政府の借金は1000兆円を超えている」とウソまでついて消費税増税に固執するのは、このような理由からです。
「お金じゃぶじゃぶ政策」は2%程度の穏やかなインフレを起こそうという政策ですが、日銀はインフレをそのように穏やかな状態に制御することに自信がありません。戦争中の日本は戦費を調達するために紙幣を大量に増刷したので、敗戦後に超インフレになってしまいました。日銀はその時の経験がトラウマになっています。
しかし国が負ければ滅びるという大戦争をしている時、政府は勝つためにできることは何でもするわけで、その時と今とではまるで状況が違います。最近の世論が「日本はそんなに経済成長しなくても良い」という傾向に傾いているために、日銀は安心してこのような妄想に浸っているだけなのでしょう。
多くの政治家が「日本経済はもはや成長しない」と言っている以上、日銀は「お金じゃぶじゃぶ政策」を行うことによって超インフレが起きてしまうかもしれないリスクを、負おうとしません。
白川総裁をはじめとする日銀幹部が、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否してデフレ状態を長い間放置したのも、多くの政治家の発言を忖度した結果です。
以下はひと続きのシリーズです。
10月4日 穏やかなインフレになれば、経済は自然に良くなっていく
10月6日 プラザ合意で、為替を本当の変動相場制にすることにした
10月7日 日本には、お金じゃぶじゃぶ政策しか残されていなかった
10月8日 お金じゃぶじゃぶ政策は、欧米では当たり前の政策だった
10月9日 19世紀末から20世紀前半は、金本位制が優れた制度だと考えられていた
10月11日 高橋是清は、経済は集団心理で動く、と理解していた
10月12日 経済は集団心理で動くのに、経済学はそれを数字で説明しようとする
10月13日 経済活動は、その民族の伝統的な考え方に大きく影響されている
10月14日 『男子の本懐』はデフレを深刻にした金本位制復活がテーマ
10月15日 2014年の消費税値上げにより、アベノミクスがとん挫した
10月17日 白川日銀総裁は、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否した
10月18日 日銀がお金じゃぶじゃぶ政策を採用しなかったのは、国民が「日本はもう経済成長しなくても良い」と考えたから
10月19日 20年以上日本経済が停滞したのは、大乗仏教が原因