日本の政治家・財務省・日銀は、長い間日本経済がデフレに陥って経済成長をしていない状態を放置してきました。政治家が失政を行えば、選挙によって結果を問われます。麻生総理も民主党も失政を問われて選挙に負けました。
ところが財務省や日銀は選挙によって結果を問われることがありません。「自分たちのやってきたことは正しいのだが、外部要因によって経済がうまくいかないのだ」と言い続ければ、身の安全を図ることができます。
だから、財務省は緊縮財政と消費税増税、日銀はお金じゃぶじゃぶ政策の拒否、という従来のやり方を固執してきたわけです。そして経済が成長しないのを、バブルの後遺症である銀行の不良債権が足かせになっているとか、岩盤規制を打ち壊す構造改革が不十分だとか、IT産業が遅れているためだとか、原因を外部要因のせいにしてきました。
そして多くの国民は、「日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい」と考えているので、財務省や日銀の弁解を深く追求してこなかったわけです。
私はいままで、アベノミクスの内容とそれが実施に至るまで長い時間がかかったことを説明してきました。これからなぜ今の日本人は「日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい」と考えるようになったのか、という本題に入ります。
私は、バブル後の日本が20年以上の長きにわたって経済成長しなかったのは、大乗仏教の発想が日本人に大きな影響力を与えているからだ、と考えています。「経済は成長しなくても良い」などというには、大乗仏教の発想です。
仏教は、大切なもの(家族、財産、地位など)が失われたときに感じる苦しみを避けるにはどうすればよいか、を教える宗教です。結論は簡単で、ものを最初から持たないようにし、ものを持ちたいという欲望を抑えればよいのです。
経済的に豊かになり、周囲をもので囲まれた生活を送ることは、大乗仏教にとって望ましくないのです。敗戦後の食うや食わずの状態の時は、さすがの日本人も物質的に豊かな生活を望みました。しかしある程度経済的に余裕が出てくると、大乗仏教の発想が頭をもたげてきたのです。
以下はひと続きのシリーズです。
10月4日 穏やかなインフレになれば、経済は自然に良くなっていく
10月6日 プラザ合意で、為替を本当の変動相場制にすることにした
10月7日 日本には、お金じゃぶじゃぶ政策しか残されていなかった
10月8日 お金じゃぶじゃぶ政策は、欧米では当たり前の政策だった
10月9日 19世紀末から20世紀前半は、金本位制が優れた制度だと考えられていた
10月11日 高橋是清は、経済は集団心理で動く、と理解していた
10月12日 経済は集団心理で動くのに、経済学はそれを数字で説明しようとする
10月13日 経済活動は、その民族の伝統的な考え方に大きく影響されている
10月14日 『男子の本懐』はデフレを深刻にした金本位制復活がテーマ
10月15日 2014年の消費税値上げにより、アベノミクスがとん挫した
10月17日 白川日銀総裁は、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否した
10月18日 日銀がお金じゃぶじゃぶ政策を採用しなかったのは、国民が「日本はもう経済成長しなくても良い」と考えたから
10月19日 20年以上日本経済が停滞したのは、大乗仏教が原因