アベノミクスは三つの施策(三本の矢)から成り立っています。
1、大胆な金融緩和
2、機動的な財政出動
3、民間投資を喚起する成長戦略
3の「民間投資を喚起する成長戦略」を政府が策定し、事務官僚がそれを実施するのは無意味です。戦後に通産省がやってきた行政指導は、実際には何の役にもたっていませんでした。
そもそも企業の実務を知らず、技術も分からず、ビジネスに体を張っているわけでもない官僚が産業を指導できるわけがありません。こんなことは少し考えれば分かることです。理化学研究所など国立の技術研究所が基礎技術の開発を行うのは大事ですが、それと事務官僚の行政指導を混同してはなりません。
3の「民間投資を喚起する成長戦略」は、アベノミクスを策定する段階で、官僚たちが自分たちの存在を主張して挿入させた条項なのです。小泉内閣で経済関係の大臣をつとめた竹中平蔵教授は、官僚が策定した「成長戦略」をガラクタと呼んでいたそうです。
将来どの産業分野が有望かなど誰も分にも予想できません。各企業が社運を賭して開発をしていく以外に方法がなく、数多くやればそのどれかがヒットするというだけのことです。IBMが開発したコンピュータは、大砲の弾の弾道計算をさせる目的で開発したもので、50台を軍隊に納入したらそれで終わり、のはずのものでした。それが思いがけず大発展しました。
2の「機動的な財政出動」は、公共投資に税金を投入して需要を作り出すということです。やった方が少しは効果がありますが、メインの話ではありません。「機動的」にやるというのは、アベノミクスを促進するために少しはやるが経済が順調に成長を始めたら止める、という意味です。
結局、アベノミクスのメインは、1の「大胆な金融緩和」です。2の「機動的な財政出動」は補助的な役割に過ぎず、3の「民間投資を喚起する成長戦略」は無駄です。
以下はひと続きのシリーズです。
10月4日 穏やかなインフレになれば、経済は自然に良くなっていく
10月6日 プラザ合意で、為替を本当の変動相場制にすることにした
10月7日 日本には、お金じゃぶじゃぶ政策しか残されていなかった
10月8日 お金じゃぶじゃぶ政策は、欧米では当たり前の政策だった
10月9日 19世紀末から20世紀前半は、金本位制が優れた制度だと考えられていた
10月11日 高橋是清は、経済は集団心理で動く、と理解していた
10月12日 経済は集団心理で動くのに、経済学はそれを数字で説明しようとする
10月13日 経済活動は、その民族の伝統的な考え方に大きく影響されている
10月14日 『男子の本懐』はデフレを深刻にした金本位制復活がテーマ
10月15日 2014年の消費税値上げにより、アベノミクスがとん挫した
10月17日 白川日銀総裁は、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否した
10月18日 日銀がお金じゃぶじゃぶ政策を採用しなかったのは、国民が「日本はもう経済成長しなくても良い」と考えたから
10月19日 20年以上日本経済が停滞したのは、大乗仏教が原因