日本の社会を注意深く観察すると、様々な場面で仏教的な発想に基づくことが行われていることに気づきます。
民主党の鳩山由紀夫総理は、2009年に国連気候変動首脳会合で、「日本は温室効果ガスを25%削減する」と宣言して列席していた各国首脳からヤンヤの喝さいを浴びました。
私は、この突然のパーフォーマンスをテレビで見た時、「日本の経済に対してどれだけの悪影響があるのだろう」と非常に心配になりました。私と同じように日本経済への悪影響を危惧した人は他にもたくさんいました。
その一方で、「鳩山は良く言った。これからも地球環境を守るためにがんばれ」と声援を贈る人もかなり多くいました。彼らは汚れた現世を少しでも清らかにしようという鳩山を高く評価する一方、経済的に貧しくなることへの恐れを感じなかったのです。
鳩山由紀夫とその支持者は、ものを所有することが良くないことで、この濁世を浄土に変えることが正しい、と仏教の発想でものを考えています。鳩山さんのように実家が経済的に豊かな人には、経済的豊かさを軽視する傾向があります。
同じように、「日本経済はこれ以上の成長を望めないし、望まなくてもいい」というのはまさに大乗仏教の発想です。この発想が正しいと思っている日本人が多かったため、「お金じゃぶじゃぶ政策」の実施が遅れ、日本は20年以上にわたる経済的停滞を余儀なくされました。
大乗仏教という実質的に日本とチベットにしかない特殊な宗教は、これほど日本の現実社会に対して強い影響力を今でも持っています。大乗仏教は日本の伝統文化として根付いており、人々の心を慰める役目を今でも果たしています。しかし明治になるまでは、あくまで宗教の枠内に納まっていて、現実の社会を規制するようなことはありませんでした。
ところが明治になって、仏教用語である自由・平等を欧米のFreedomとEqualityの訳語にしたために、法律上の権利になってしまいました。また本来は独身で山の中に世間から離れて暮らすべき僧侶が結婚して社会生活を営み始めたために、仏教の発想が日本の現実社会を規制するようになってしまいました。
昔のように、現実社会は神道で、あの世のことは仏教で、という住み分けを復活させなければなりません。
以下はひと続きのシリーズです。
10月4日 穏やかなインフレになれば、経済は自然に良くなっていく
10月6日 プラザ合意で、為替を本当の変動相場制にすることにした
10月7日 日本には、お金じゃぶじゃぶ政策しか残されていなかった
10月8日 お金じゃぶじゃぶ政策は、欧米では当たり前の政策だった
10月9日 19世紀末から20世紀前半は、金本位制が優れた制度だと考えられていた
10月11日 高橋是清は、経済は集団心理で動く、と理解していた
10月12日 経済は集団心理で動くのに、経済学はそれを数字で説明しようとする
10月13日 経済活動は、その民族の伝統的な考え方に大きく影響されている
10月14日 『男子の本懐』はデフレを深刻にした金本位制復活がテーマ
10月15日 2014年の消費税値上げにより、アベノミクスがとん挫した
10月17日 白川日銀総裁は、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否した
10月18日 日銀がお金じゃぶじゃぶ政策を採用しなかったのは、国民が「日本はもう経済成長しなくても良い」と考えたから
10月19日 20年以上日本経済が停滞したのは、大乗仏教が原因