日本政府の借金が1000兆円を超えていて、この状態を放置すれば国家破産の可能性があるので、そうならないように増税が必要だという主張がされています。いったい政府の借金が1000兆円を本当に超えているのか、確認してみます。
財務省のホームページに国の財務書類が載っています。その平成27年3月末のバランスシートの要約を下記します。
現金・預金 28兆円 公債 885兆円
有価証券 139 政府短期証券 99
貸付金 138 借入金 29
出資金 70 その他負債 159
その他資産 305 資産と負債の差額 ▲492
資産合計 680 負債合計 680
公債・政府短期証券・借入金を合わせて確かに1013兆円の借金がありますが、一方で680兆円の資産があります。結局、政府のネットの借金は1000兆円ではなく、492兆円になります。
財務省のホームページには連結財務書類も掲載されていますが、日銀は連結されていません。日銀は株式会社組織で、その株式の55%を政府が所有しています。したがって日銀はまぎれもなく政府の子会社なのですが、財務省は絶対に日銀と連結しようとしません。
平成28年3月末の日銀の資産は、国債の349兆円を含めて405兆円あります。従って日銀と連結すると政府のネットの負債は▲492兆円+405兆円=▲87兆円にしかなりません。この辺の事情は、高橋洋一、ぐっちーさん共著の『勇敢な日本経済論』に詳しく書かれています。
要するに、「政府の借金1000兆円」というのは大嘘で、政府の借金は87兆円でGDPの20%未満にすぎません。アメリカやイギリスの政府債務残高の対GDP比は約70%なので、日本は財政的に非常に優秀なのです。
以下はひと続きのシリーズです。
10月4日 穏やかなインフレになれば、経済は自然に良くなっていく
10月6日 プラザ合意で、為替を本当の変動相場制にすることにした
10月7日 日本には、お金じゃぶじゃぶ政策しか残されていなかった
10月8日 お金じゃぶじゃぶ政策は、欧米では当たり前の政策だった
10月9日 19世紀末から20世紀前半は、金本位制が優れた制度だと考えられていた
10月11日 高橋是清は、経済は集団心理で動く、と理解していた
10月12日 経済は集団心理で動くのに、経済学はそれを数字で説明しようとする
10月13日 経済活動は、その民族の伝統的な考え方に大きく影響されている
10月14日 『男子の本懐』はデフレを深刻にした金本位制復活がテーマ
10月15日 2014年の消費税値上げにより、アベノミクスがとん挫した
10月17日 白川日銀総裁は、頑なに「お金じゃぶじゃぶ政策」を拒否した
10月18日 日銀がお金じゃぶじゃぶ政策を採用しなかったのは、国民が「日本はもう経済成長しなくても良い」と考えたから
10月19日 20年以上日本経済が停滞したのは、大乗仏教が原因