西欧のキリスト教社会で生まれたFreedom(自由)という言葉には、隣人愛を行うという意味が含まれています。明治初期の日本人は中村正直の『自由之理』を読んだり西欧に留学したりして、このことをよく分かっていたようです。
しかし、Freedomを「自由」と訳してしまったために、日本人の間に徐々に誤解が広がってきました。「自由」は仏教用語で、「勝手気まま」を意味します。出家して山の中で社会とは無関係に思うがままに振る舞うことを意味します。そこには社会正義という意味は含まれていません。出家者は社会を離脱しているので、社会のことなど考えないからです。「自由」の意味を誤解しているので、その考え方の経済面での応用である経済的自由主義の意味をも日本人は誤解しています。
英米の本来の経済的自由主義は、経済活動を通じて人を助けようとする考え方です。そのやり方に関して、他人から干渉されずに自分が良いと思うやり方をとる、ということです。
鉄鋼業で成功し大富豪になったアンドリュー・カーネギーの資産は、現在価格で40兆円だそうです。この世界一の大富豪は金儲けの秘訣を聞かれて、「黄金律の教えを実践せよ」と返事をしました。
黄金律とは、聖書に出てくるイエス・キリストの教えを指します。
「自分がしてほしいと思うことを、他人にせよ」(「マタイによる福音書」7章12節)。誤解を恐れずに言えば、Freedomとは宗教活動なのです。
カーネギーが話した内容を詳しく知りたい方は、ナポレオン・ヒル著の『巨富を築く人 誰にでもできるそのテクニック カーネギーの個人授業』を読んでください。
Freedomという言葉に近い意味の日本語は、「誠」です。その経済活動への応用は、経済的誠になります。この言葉は今私が作ったのですから、誰も聞いたことが無いはずですが、意味はお分かりのはずです。この言葉には社会正義の意味が入っているので、「経済的自由」のような好き勝手なことをしても良いという誤解を生じさせません。
経済的自由の意味を多くの日本人は誤解しています。そのために経団連の会長までが、支那の邪な野望を手助けしても良い、とまで考えるようになってしまいました。アメリカは支那を没落させようと本気になっているので、支那に深入りするとアメリカと摩擦が起きます。経団連の幹部たちは、支那の市場とアメリカの市場のどちらが大事かの判断もできなくなっているようです。渋沢栄一は、今ごろ草葉の陰で泣いているでしょう。
以下はひと続きのシリーズです。
9月8日 渋沢栄一は、損得勘定だけで世の中を考えてはならない、と考えていた
9月9日 西郷隆盛は、もっと戦をしなくてはならない、と言っていた
9月10日 欧米を見聞した維新当時の指導者は、征韓論に反対した
9月13日 今の日本人は、経済的自由主義を正確に理解していない
9月15日 欧米のFreedomには、保護し教育するために強制する、という考えが含まれている
9月16日 明治時代の官営事業は、経済的自由主義に基づいている
9月17日 自由主義は、弱者と強者を同じ土俵で競争させるという考え方ではない
9月18日 ちゃんとした大人は好きなことをやって良い、というのが自由主義
9月20日 Freedomは昔から日本にあり、誠と呼ばれていた
9月21日 経営者団体の目的は、経済活動に関して政府に提言すること