最近、世界中でマスコミや世論調査機関の予測が外れるという現象が多発しています。2016年6月にイギリスで、EUからの離脱の是非を問う国民投票が行われましたが、予想に反して離脱派が勝利し世界中がびっくりしました。
そもそもこの選挙を実施した保守党のキャメロン首相自身が残留派でした。国民投票ではEUに残留するという結果が出ることを疑っていなかったため、敢えて国民投票を実施して自らの政権基盤を強固にしようとしたのです。英国の法制度では、EUに残留するか否かは国会の決議によって決められる問題であり、国民投票に問う必要などなかったのです。
致命的な判断ミスにより退陣したキャメロン首相の後を受けて、テレーザ・メイが首相になりました。彼女はもともとEUへの残留派でしたが、国民投票の結果を尊重し(法的には無視しても良いのです)、EUと離脱交渉を行っています。
彼女はタナボタで首相になっただけで、保守党の党首として選挙に臨みそれに勝って首相になったのではありません。そこで議会の解散総選挙を行い、その選挙で勝って自らの権力基盤を強化しようとしました。ところが意外にも選挙で負けてしまいました。
選挙前の世論調査やマスコミは、メイ首相率いる保守党の圧勝を予想していました。それで安心した彼女は、予算の削減のために年金に手を付けると発表してしまいました。それによって老人たちの怒りを買い、選挙に負けて保守党は議席を減らしてしまったのです。このような経緯でメイ首相の指導力が弱くなり、閣僚の辞任が相次いでいます。その結果、EUとの離脱交渉をきちんとできない状況にまでなっています。
独立戦争以来、イギリスとアメリカの関係は常に険悪で、1812年には実際に戦争をしています。その後も何回も戦争をやりそうになりました。アメリカが強国に成り上がった20世紀初頭にイギリスはアメリカを徹底的に研究し、「アメリカを決して敵に回してはならない」という方針を打ち出しました。
以後アメリカが無理難題を言うのを「ご無理ごもっとも」と我慢し、二つの世界大戦ではアメリカを味方につけました。イギリスはその情報収集能力で、生き残ってきたのです。ところが今、その能力がすこし怪しくなってきました。
以下はひと続きのシリーズです。
12月21日 アメリカと日本のマスコミは、トランプ大統領の当選を予想できなかった
12月22日 隠れトランプの存在によって、マスコミが選挙予想を外した
12月23日 第二次世界大戦ごろからアメリカのグローバル化が始まった
12月24日 グローバル主義者は、固有の文化や習慣を破壊して均一の世界を作ろうとした
12月26日 アメリカは、また人種差別をするようになるだろう
12月27日 アメリカの支配層が総がかりでトランプの邪魔をした
12月30日 アメリカと日本のグローバル主義は、発想の基が違う
12月31日 アメリカのグローバル主義者は、人種・宗教差別は目的に反する、と考えている
1月5日 日本国憲法の男女平等の規定は、アメリカ占領軍が作った
1月8日 イギリスの王位継承法の改正に影響されて、女系天皇容認論が出てきた