キリスト教国の王様にはキリスト教の聖職者としての務めはなく、普通の俗人にすぎません。彼らは戴冠式で偉い聖職者から王冠を授けられますが、これは神から国王に任命されたことを示す儀式です。
神は誰でも好きな人物を国王に指名できるわけで、男性でも女性でも構いません。従って西欧では昔から女王がいました。イギリスのエリザベス1世や2世、オーストリアのマリア・テレジア、ロシアのエカテリーナなど有名な女王をすぐに思い浮かべることができます。単に王位継承順位が女性の場合、不利に扱われていただけです。2013年のイギリスの王位継承法の改正は、継承順位に男女の差をつけるのをやめた、ということです。
これに対して、日本の天皇陛下には聖職者としての務めがあります。神道は、天皇陛下のお体には「天皇霊」という魂が入っていると考えています。この「天皇霊」は、天照大神やその子孫の大勢の天皇陛下の魂が集積されたものと考えられています。
そして天照大神は、天皇陛下の体内にある天皇霊を通して天皇陛下にメッセージを送るのです。天皇霊は一種の受信装置であり、天皇陛下は一種の霊媒です。天皇陛下は神からのメッセージを受け取り、それに基づいて日本のために祈りをささげられます。天皇陛下には聖職者の一面があり、「神の代理人」なのです。
天皇陛下は、キリスト教でいうと普通の国王ではなくローマ教皇に相当します。天皇陛下の代替わりの時に「大嘗祭」をしますが、これは「天皇霊」が新しい天皇陛下のお体に入ることを象徴する儀式です。
神道では、「天皇霊」は天照大神の男系の子孫にしか宿らないと考えています。従って天皇陛下のお嬢様である内親王には「天皇霊」は宿ることができるので、「女性天皇」はありえます。しかし「女系天皇」は天皇陛下の男系の子孫ではないので、天皇陛下の役目を果たせないのです。
イギリスの王位継承法が変わったから、日本もそれを真似して「女系天皇」を認めたらどうかという議論は、神道とキリスト教の違いを理解せず、ひいては宗教の本質を理解していない議論です。
以下はひと続きのシリーズです。
12月21日 アメリカと日本のマスコミは、トランプ大統領の当選を予想できなかった
12月22日 隠れトランプの存在によって、マスコミが選挙予想を外した
12月23日 第二次世界大戦ごろからアメリカのグローバル化が始まった
12月24日 グローバル主義者は、固有の文化や習慣を破壊して均一の世界を作ろうとした
12月26日 アメリカは、また人種差別をするようになるだろう
12月27日 アメリカの支配層が総がかりでトランプの邪魔をした
12月30日 アメリカと日本のグローバル主義は、発想の基が違う
12月31日 アメリカのグローバル主義者は、人種・宗教差別は目的に反する、と考えている
1月5日 日本国憲法の男女平等の規定は、アメリカ占領軍が作った
1月8日 イギリスの王位継承法の改正に影響されて、女系天皇容認論が出てきた