神道と仏教との使い分けが崩れたために、「国家は悪いことをする」という考えが広まった

現実社会のことは神道で、苦から逃れるという心の問題解決は仏教で、という二つの宗教の使い分けが崩れ、仏教によって現実社会を考えることによってさまざまな問題が生じてきました。その一つが、「国家は悪いことをする」「日本は悪いことをした」という考え方が広がったということです。

このような考え方が広がるきっかけになったのが、敗戦後に日本を占領したアメリカ軍がおこなった、War Guilt Information Program(日本は戦争で悪いことをしたという罪悪感を国民に植え付ける政策)です。

占領軍はこの政策を実施することを学校やマスコミに強制し徹底的に行ったため、「国家は悪いことをする」という考え方が日本中に広まりました。しかし日本が占領されていたのは7年間だけなのに、「国家は悪いことをする」という考え方はその後60年以上日本に広がったままです。

日本の大乗仏教にはもともとそのような考え方があり、神道と仏教の使い分けが崩れて仏教の考え方で現実社会を考えるという下地が出来上がっていました。そういう状況の時にアメリカ占領軍のWar Guilt Information Program(日本は戦争で悪いことをしたという罪悪感を国民に植え付ける政策)が実施されたので、一挙に日本中に広がったわけです。

特に敗戦後は、神道の勢力が弱くなって入れ替わりに仏教の力が強くなって、この政策が受け入れやすくなっていました。敗戦によって神道の勢力が弱まり仏教の勢力が増えたことは、統計を見れば確認できます。戦前と戦後を比較できるデータはありませんが、文化庁が作成した「宗教関連統計に関する資料集」によって、敗戦直後と現在の状況は比較可能です。

  •           昭和24年(A)   平成25年(B)   B/A
    ・仏教の教師数       170,270人        377,898人    222%
    ・神道の教師数       142,551人          81,016人           57%

なお、「教師」は各宗教団体が認定している資格保有者で、神主や僧侶よりも範囲は広いですが、教団の幹部と考えて良いでしょう。敗戦から4年後の昭和24年から64年間で、仏教系の教師は二倍以上になっているのに対し、神道系はほぼ半減しています。

以下はひと続きのシリーズです。

11月19日 キリスト教・神道と仏教は目的が正反対

11月20日 若いときに出家するという習慣は、仏教から始まった

11月21日 おしゃか様の出家生活は、すさまじかった

11月22日 出家は、もともとは家も友人も持たない厳しいもの

11月23日 仏教は世界的に見ると、勢力は弱い

11月24日 今の日本の社会問題の多くは、神道と仏教の使い分け原則が崩れたことに原因がある

11月25日 FreedomとEqualityの訳語に仏教用語を使ったために、使い分けの伝統が崩れた

11月26日 神道と仏教との使い分けが崩れたために、「国家は悪いことをする」という考えが広まった

11月27日 仏教は、無理してものを捨てなくても良い、と教義を次第に甘くしていった

11月28日 仏教は、欲望を抑えきれない凡人が戦争を起こす、と考える

11月29日 権力を監視するのが憲法の役割、という考え方をマスコミは悪用した

11月30日 憲法に違反することが出来るのは、国家だけ

12月1日 欧米には、国家を監視しなければならない、という発想がある

12月2日 欧米人が考えていたのは、「国家は悪いことをする」ではなく、「権力者は悪いことをする」

12月3日 マスコミは、「国家は悪いことをする」と思い込んでいる

12月4日 マスコミが権力を監視することは非合法であり、不要である

12月5日 地下鉄サリン事件やテロ事件によって、テロ等準備罪の必要性が高まった

12月6日 「国家は悪いことをする」と思い込んだ者たちは、テロ等準備罪に反対した

12月7日 「国家は悪いことをする」という発想が「安倍政治を許さない」を生んだ

12月8日 「国家は悪いことをする」と思い込んでいる者も、一種の愛国者

12月9日 刑事事件の被告は、国家権力からいじめられている者

12月10日 支那や朝鮮が行った残虐行為に言及しない

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