欧米人が考えていたのは、「国家は悪いことをする」ではなく、「権力者は悪いことをする」

小室直樹先生は、欧米では「国家はほっておいたら悪いことをするので、憲法によって監視しなければならない」と考えられているので、日本でも同じように憲法で国家のすることを監視しなければならない、と考えました。

「ではなぜ、ほっておけば悪いことをする国家を欧米人は潰さなかったのか?」という疑問が起きてきます。答えは簡単で国家が絶対に必要だったからです。17世紀の西欧は国内にばんきょする領主が力を失い、統一された国家が出現しました。

工業や商業が盛んになっていきましたが、産業を発展させるためには国内の治安が守られなければなりません。統一国家が出現したので、国家同士の争いも激しくなりました。国民の豊かさと安全を守るためには、軍隊と警察を常設した強大な国家がどうしても必要でした。だから「国家は不要だ」などという議論は起きませんでした。

現在のイギリスの政治体制は、17世紀末の名誉革命によって出来上がりました。ジョン・ロック(1632~1704)は、経済学者・政治学者として有名ですが、彼の本業は名誉革命を起こした革命家なのです。その彼は、国家がなければ「万人の万人に対する戦い」が起きると考えて、国家が必要なことを疑っていませんでした。

彼は自由主義経済を主張していて、「国家は泥棒を捕まえ、敵軍を撃退して火事を消していれば良い」と小さな政府が主張していました。しかし警察と軍隊だけは強力でなければならないと考えていました。

要するに欧米の国家に対する考え方は、「国家は安全保障と治安をしっかりするために必要な組織だから強力でなければならない。その一方、権力者はすぐに悪いことをするから、憲法で監視しなければならない」ということです。

「国家は悪いことをする」ということではなく、「権力者は悪いことをする」ということでした。その「悪いこと」の実例は、国家権力が法律に基づかないで個人を逮捕するとか、国会の承認を得ないで税金を課すとか、国王の嫌いな宗教を弾圧するなど、国民の具体的な利益を侵害することです。

以下はひと続きのシリーズです。

11月19日 キリスト教・神道と仏教は目的が正反対

11月20日 若いときに出家するという習慣は、仏教から始まった

11月21日 おしゃか様の出家生活は、すさまじかった

11月22日 出家は、もともとは家も友人も持たない厳しいもの

11月23日 仏教は世界的に見ると、勢力は弱い

11月24日 今の日本の社会問題の多くは、神道と仏教の使い分け原則が崩れたことに原因がある

11月25日 FreedomとEqualityの訳語に仏教用語を使ったために、使い分けの伝統が崩れた

11月26日 神道と仏教との使い分けが崩れたために、「国家は悪いことをする」という考えが広まった

11月27日 仏教は、無理してものを捨てなくても良い、と教義を次第に甘くしていった

11月28日 仏教は、欲望を抑えきれない凡人が戦争を起こす、と考える

11月29日 権力を監視するのが憲法の役割、という考え方をマスコミは悪用した

11月30日 憲法に違反することが出来るのは、国家だけ

12月1日 欧米には、国家を監視しなければならない、という発想がある

12月2日 欧米人が考えていたのは、「国家は悪いことをする」ではなく、「権力者は悪いことをする」

12月3日 マスコミは、「国家は悪いことをする」と思い込んでいる

12月4日 マスコミが権力を監視することは非合法であり、不要である

12月5日 地下鉄サリン事件やテロ事件によって、テロ等準備罪の必要性が高まった

12月6日 「国家は悪いことをする」と思い込んだ者たちは、テロ等準備罪に反対した

12月7日 「国家は悪いことをする」という発想が「安倍政治を許さない」を生んだ

12月8日 「国家は悪いことをする」と思い込んでいる者も、一種の愛国者

12月9日 刑事事件の被告は、国家権力からいじめられている者

12月10日 支那や朝鮮が行った残虐行為に言及しない