アメリカにも社会主義思想が広まっていた

第二次世界大戦の時のアメリカ大統領だったフランクリン・ルーズベルトの周囲にソ連のスパイが多く、ルーズベルト自身も社会主義思想に大きく影響されていたということが分かると、当時のアメリカの行動の辻褄が合います。

自由主義と社会主義は敵対する関係にあります。当時、マルクス系の社会主義国だったソ連と国家社会主義系だったドイツや日本が敵対していました。アメリカがちゃんとした自由主義国だったなら、両者を互いに争わせて、アメリカは高みの見物をするはずです。ところがルーズベルト大統領は、ソ連の味方をしてドイツや日本と戦いました。彼がソ連のスパイに操られていたからです。

1933年に彼が大統領になると、ニューディール政策を策定して、公共事業を行って失業者を雇用し、経済を回復させようとしました。これは政府が市場に介入したということです。社会主義思想から影響を受けていた彼にとっては、自然に受け入れられる政策だったでしょう。

「ルーズベルト大統領のニューディール政策によってアメリカの景気は回復した」、と以前は考えられていました。しかし、実際の失業率は15%ぐらいに高止まりしていて、とても恐慌を脱したとは言えない状態でした。

ルーズベルト大統領は、第二次世界大戦でアメリカを勝利に導いた偉大な大統領だという評価が、アメリカ人に定着しています。だから彼がやった政策はすべて正しかったということにしたいアメリカ人が多く、ニューディール政策は有効だったという都市伝説ができたのです。

実際にアメリカが好景気になったのは、第二次世界大戦によって軍事支出が増えたためです。景気を回復させるためにアメリカは戦争をした、という事実を隠そうとして、ニューディール政策の効果を過大に宣伝したという側面もあります。

ニューディール政策は、当時のアメリカで社会主義の考え方が広まっていたという事実を物語っていますが、公共投資が恐慌対策として有効だったことの証明には、なっていません。

以下はひと続きのシリーズです。

11月29日 古典的な自由主義経済理論は、今も有効なのか

11月30日 大恐慌後、国際貿易は高関税政策によって半減した

12月1日 ヒトラーは、公共投資を大規模に行って経済を立て直した

12月2日 ヒトラーは人の心に訴えた

12月3日 社会主義というのは、何が正しいかを国家が決める、という考え方

12月5日 ナチス・ドイツは社会主義国家だった

12月7日 社会主義も、Freedomの一つの解釈である

12月10日 社会主義は、ドイツ哲学の流れから生まれた

12月12日 フランス革命軍の兵卒の志気は高かった

12月14日 プロイセンは、国民を一人前の市民として扱わなければならなくなった

12月17日 ヘーゲル哲学は、プロイセン政府に好都合だった

12月19日 マルクスは、ヘーゲル哲学を進化させて社会主義思想を生み出した

12月21日 労働組合所属の熟練労働者の賃金が、中産階級より高くなった

12月24日 大企業と組合は、社会主義の考え方を利用して市場の独占を図った

12月26日 ドイツはもともと社会主義思想が強かったから、ヒトラーは公共投資をできた

12月28日 第二次世界大戦前のアメリカ政界には、ソ連のスパイが大勢いた

1月4日 アメリカにも社会主義思想が広まっていた

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コメント

  1. ソフィア より:

    軍事支出もダム建設も「政府支出による需要創造」なので、どちらも「公共事業」の定義に当てはまりますし、それを踏まえると本文中に「軍事需要によって不況を脱した」とあるのに、結論が「公共事業に景気回復効果はなかった」というのは矛盾していないでしょうか?

    • 市川隆久 より:

      軍事支出も公共事業の一種ですので、確かにご指摘の通りですね。ユニークな経済学者であるハイエクは、土木工事のような公共事業を行ってもその後に膨らんだ債務を圧縮するため景気は逆戻りするから、やっても意味がないと言っています。私はこのようなことを言いたかったのです。戦争の時は勝たなければならないので、後のことを考えずにむちゃくちゃな支出をします。その国のGDPぐらいの出費をするのではないでしょうか。そのぐらいの大規模な公共事業をすれば景気は当然回復します。ただし戦後に別の大きな問題が生まれますが。一昔前の経済学者はニューディール政策によってアメリカの景気は回復したと言い、私も子供の時にそのように教わりました。しかし最近の学者は、平時の財政悪化を気にしながらの及び腰の公共事業は大して効果がないと言っているようです。

  2. ソフィア より:

    この議論は結局の所、古典派経済学とケインジャンの対立構造に繋がっている訳ですが、「公共投資にも効果はなかった」と言っても、ブロック経済以前に不況の現実はあるわけです。
    そして、不況の構造と言うのが、自然需要に対する供給力過剰(反セイの法則)にあるとしたら、自然に任せていれば景気が回復すると言うのは現実的ではないのではないでしょうか?
    実際、小泉内閣以降、古典派経済学の考え方を優先して経済運営をしてきましたが低成長が続き、不況が本質的に克服されたと言うことはないし、金融政策すら「政府介入だから駄目」として、何もしなければ自然回復すると言うのは宗教的盲信ではないかと思えてしまいます。
    市川さまの記事は歴史物としては面白いのですが、経済政策に関しては人命や多くの人々の生活や幸福もかかっているので、先に結論を出さず、柔軟に対立する考え方も検討して結論を出して欲しいと思います。
    お願い致します。