アドルフ・ヒトラー(1889年~1945年)は大悪党だということが定説になってしまい、彼を少しでも弁護すれば世間からバッシングを受けてしまいます。しかし彼が政権の座に着いてから第二次世界大戦でドイツが負けるまでの間は、世界中で彼の能力を高く評価する人がたくさんいました。私もヒトラーは一種の天才ではないか、と思っています。
彼は、特に高等教育を受けたわけではなく、若いときは売れない画家でした。第一次世界大戦が起きて、彼はドイツ軍に従軍しました。非常に勇敢に戦ったために6回も勲章を授けられましたが、その割にはあまり昇進せず、下士官のまま終戦を迎えています。どうやら将校としての指導力に欠けると判断されたようです。
ところが意外にも、彼には軍事的な才能がありました。第二次世界大戦がはじまった時、彼は爆撃機で敵の拠点を徹底的に攻撃したのちに、地上軍を投入するという「電撃作戦」を考案しました。凡庸な将軍たちはそれに反対したのですが、ヒトラーはそれを強行して大成功を収めました。敵の拠点を徹底的に攻撃すれば、敵は戦意を失い、退却するか降伏すると考えたのです。彼はこのように、人間の心の動きを見抜くのに長けていました。
経済運営でも、ヒトラーは才能を発揮しました。「公共投資を何億マルクすれば、GDPが何パーセント上昇し、失業率は何パーセント改善する」などと学者や官僚のようなことを考えませんでした。
「失業者が職を得て家族を養うことが出来るようになれば、心が変わり消費にも積極的になる」と、人間の心の変化を予想したのです。彼はアウトバーン(高速道路網)建設を効率的に安く行おうなどとは考えていませんでした。それよりも失業して不安を感じている人間の心理の改善を優先したのです。
彼は失業者を大勢雇用するために、工事に建設機械を使わず、つるはしとハンマーを使って手作業で行うことさえ指示しました。何しろナチスが政権を採る前のドイツ経済は失業率40%というどん底でした。
その時にヒトラーがドイツ人に希望を与えたので、ドイツ人の経済的なマインドが一気に好転したのです。ドイツ経済は一挙に改善され、失業がなくなって完全雇用状態になりました。かくしてヒトラーは、ドイツ人の心をがっちりとつかんだのです。
以下はひと続きのシリーズです。
11月30日 大恐慌後、国際貿易は高関税政策によって半減した
12月1日 ヒトラーは、公共投資を大規模に行って経済を立て直した
12月3日 社会主義というのは、何が正しいかを国家が決める、という考え方
12月14日 プロイセンは、国民を一人前の市民として扱わなければならなくなった
12月19日 マルクスは、ヘーゲル哲学を進化させて社会主義思想を生み出した
12月21日 労働組合所属の熟練労働者の賃金が、中産階級より高くなった
12月24日 大企業と組合は、社会主義の考え方を利用して市場の独占を図った
12月26日 ドイツはもともと社会主義思想が強かったから、ヒトラーは公共投資をできた