これから、「正しいことは上から与えられるから、各人はそれに従わなければならない」という社会主義という思想がどのようにして出来てきたか、を説明しようと思います。
社会主義の思想は大昔からありましたが、マルクス式の社会主義やナチスの国家社会主義は、自由主義が確立した19世紀から20世紀にかけて、自由主義に反対して生まれたものです。
そこでまずは自由主義を説明しなければなりません。自由主義はキリスト教のFreedomに基づいていて、立派なキリスト教徒でさえあれば、社会の法律やルールをあまり意識せず自分の判断で行動してもかまわないという考え方です。
明らかに悪いことや他人を害することをしてはならないが、他人に迷惑をかけない限り自分のしたいことをして良いのであって、無理やり正しい行動を個人に強制すべきではない、というのが自由主義です。各人が自分の利益を考えて行動すれば、結果的に社会はうまく回っていく、と考えるのです。
例えば、川に落ちて溺れかけている人がいたとします。そこに通りかかった人には、助ける法的な義務はありません。しかし、助けたことに対する謝礼を期待して助ける人が出てくるし、あの人は立派な人だという評判が欲しくて助ける人が出てくるかもしれません。あるいは、隣人愛に燃えて助けようとする人もいるでしょう。結果的に、人命救助という正しいことがなされるのだから、法律で救助を命令する必要はないのです。
これに対して、「何が正しいか」は上から自分に与えられるものであって、自分で勝手に判断するものではない、という考え方が社会主義です。溺れかけている人を見たら助けることを義務化しようとする考え方です。
この考え方も、その基はFreedomにあります。神様は律法を定めたので、人間はそれに従っていればいいのだ、という側面を重視したわけです。
Freedomには、「消極的な自由」と「積極的な自由」の二種類があるという話を以前しましたが(色々な自由がある)、自由主義は消極的な自由の流れ、社会主義は積極的な自由の流れ、というように理解することも可能だと思います。
以下はひと続きのシリーズです。
11月30日 大恐慌後、国際貿易は高関税政策によって半減した
12月1日 ヒトラーは、公共投資を大規模に行って経済を立て直した
12月3日 社会主義というのは、何が正しいかを国家が決める、という考え方
12月14日 プロイセンは、国民を一人前の市民として扱わなければならなくなった
12月19日 マルクスは、ヘーゲル哲学を進化させて社会主義思想を生み出した
12月21日 労働組合所属の熟練労働者の賃金が、中産階級より高くなった
12月24日 大企業と組合は、社会主義の考え方を利用して市場の独占を図った
12月26日 ドイツはもともと社会主義思想が強かったから、ヒトラーは公共投資をできた