大停電では、習近平派の負け

いま中国全土の31省の内20省で停電が起きているという大変な事態になっていますが、これも習近平派と反対派の権力闘争を激化させています。

中国の大停電の原因はいくつかありますが、一つはオーストラリアに対する経済制裁のブーメランです。昨年オーストラリアは、パンデミックの原因調査のために武漢研究所に国際調査団を派遣すべきと強硬に主張しました。

これに中国が怒り、オーストラリアから農産物や鉄鉱石・石炭の輸入を中止しました。ところがオーストラリアの経済は好調で、中国の制裁は効果がありませんでした。特に石炭は価格が高騰したうえに、必要量の確保が出来なくなりました。中国の発電の71%が石炭を燃やす火力発電なので、発電コストが大きく上昇しました。

中国の電力料金は政府が低く抑えているので、電力会社は発電コストが上がっても電力料金を値上げできません。発電すればするほど損が膨らむので、発電量を絞り、結果的に電力不足になっています。

習近平政権が脱炭素政策を採っていることも、電力不足の理由です。習近平政権は各省に削減目標を割り当てていましたが、8月に削減が未達の省の名前を公表しました。また9月21日の国連総会で、習近平は「2030年までに二酸化炭素排出量削減、2060年にはゼロ」という大風呂敷を広げました。

そこで各省は政府から割り当てられた削減目標を達成するために、本格的に発電量を削減し始めたのです。いずれにせよ、電力不足は、習近平政権の強引さが原因で人災です。

この習近平政権の人災に、実務派の共産党幹部が切れました。9月27日、吉林省ナンバー2の韓俊は、「全力で石炭・電力の生産量を増やす」と発表しました。翌日28日には、韓正副首相(チャイナセブンの一人)が、「いかなる対価も惜しまずに電力を確保せよ」と指示しました。韓俊も韓正も江沢民派です。

9月30日には、李克強首相が外国の大使たちに、「電力の供給を保証する」と言いました。首相が外交官たちに向かって電力問題をわざわざ説明する必要などないのですが、習近平を貶める発言をしたかったのでしょう。

このように、習近平の権力闘争は、電力問題に関する限りでは、彼の負けになったようです。

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