大躍進運動の失敗によって、共産党内部で毛沢東批判が噴出し、彼の地位が危うくなりました。当時、毛沢東の後継者と目されていた者は、劉少奇(1898~1969年)、鄧小平(1903~1997年)、林彪(1907~1971年)の3人でした。劉少奇と鄧小平が毛沢東に批判的だったので、毛沢東はこの二人の一派を「実権派」と呼んで失脚させ、林彪を後継者にして、自分の地位の保全を図りました。
当時の北京では、『海瑞罷官』という京劇が流行っていました。海瑞という明朝の清廉潔白な官僚が汚職と戦って投獄されるというストーリーで、この脚本を書いたのが、呉晗(ご・かん)という清華大学教授で、北京市副市長でもありました。
毛沢東は、自分の妻の江青を使って、当時有名な文化人だった呉晗を攻撃しました。「共産党の幹部は堕落している」というのが表向きの理由です。そして呉晗の背後にいる劉少奇や鄧小平に矛先を向けていったのです。文化人の攻撃から始まったので、この権力闘争は、「文化大革命」と呼ばれるようになりました。
習近平政権も、7~8月にかけてトップスターたちを脱税や性犯罪で摘発し、「腐敗している」と非難しています。そして彼らの背後にいる共産党幹部の不正を暴こうとしています。「文化」を利用して攻撃を開始しているやり方が、毛沢東と習近平はよく似ています。
毛沢東は、劉少奇と鄧小平などの実権派に対する攻撃に、妻である江青だけでなく高校生まで使いました。彼らをおだて上げて、「紅衛兵」に仕立てました。彼らは、「反革命分子」である実権派を摘発して回りました。
毛沢東は高校生の子供たちを洗脳するために、『毛沢東語録』という赤い小さな冊子を作りました。習近平は、「習近平思想」を学校の必修課程にして、子供たちを洗脳しようとしています。これも毛沢東とそっくりです。
習近平には、習明沢という娘がいてハーバード大学を卒業しましたが、いまは北京大学の副学長になって、中国を文化面から統制しようとしています。習近平の妻の彭麗媛は有名な歌手で、いまは人民解放軍の総政治部歌舞団団長で少将です。
習近平は、自分の妻と娘を中国の文化統制に利用しているわけで、これは毛沢東が文革に妻で京劇の俳優だった江青を利用したのと同じです。