芸能界を粛清

7月に、人気歌手の吴亦凡(ウー・イーファン)が性犯罪で警察に逮捕され、彼のSNSやインターネットのアカウントは全て消されました。彼の逮捕に対して中国中の5000万人のファンが抗議したということです。人民日報は、「有名人であればこそ、常日頃の徳行が求められる。多くの人の心を掴む人ほど、多くの人の規範とならねばならない。芸能界から膿を吐き出そう」という記事を載せました。

8月には、非常に有名な女優である鄭爽(てい・そう)は、税務当局から脱税で3億元(51億円)を追徴課税されました。そして芸能界から事実上、永久追放されてしまいました。

8月末には、中国で超人気の女優である趙薇(ヴィッキー・チャオ)が、突然行方不明になりました。そして彼女が主演した映画もSNSから消されました。彼女は、当局に逮捕されそうになり、自家用ジェットでフランスに逃げ、所有するお城に隠れているらしいのです。

わずかの間に当局が芸能界の超大物3人を逮捕・調査しようとしたことについて、中国問題の専門家は、曽慶紅・曽慶淮兄弟が絡んでいる、と述べています。曽慶紅は、かつて中国のナンバー5でした。江沢民の大番頭で、江沢民は彼を自分の後継者にしようとしたほどの実力者でした。82歳で党の要職は辞めましたが、いまだに隠然たる勢力を持っています。

曽慶淮は曽慶紅の弟で、芸能界のドンです。つまり、吴亦凡・鄭爽・趙薇は、曽慶紅・曽慶淮兄弟を通して江沢民とつながっているので、この3人のスターを締め上げれば江沢民の悪事を知ることが出来るはずだ、と考えたわけです。

趙薇(ヴィッキー・チャオ)の夫(黄有龍)のおばさん(黄麗満)は、江沢民の愛人です。彼女はこのつながりで深圳市のトップになりました。深圳市は人口1300万人で東京と同規模です。この深圳市のナンバー2が20億元(340億円)という巨額の汚職事件を起こし、死刑になりました。ところがこのうちの19億元の行方が分かっていません。

習近平派は、19億元はおばさん(黄麗満)を経由して江沢民に流れたのだろうと考え、ヴィッキー・チャオを取り調べようとしたのですが、それを事前に察知した彼女はフランスに逃げた、ということでしょう。

また、ヴィッキー・チャオはアリババの創業者であるジャック・マーなどIT企業家とも親しくしています。そしてIT起業家たちは、江沢民派です。習近平派はこの関係をも知ろうとしたのでしょう。

少し古い話ですが、3年前に、超有名女優の范冰冰(ファン・ビンビン)は、数か月間姿を消しました。結局彼女は、当局に監禁されて尋問を受けていたらしく、脱税で8億8000万元(約150億円)の追徴課税をされたあと、釈放されました。

彼女は王岐山の愛人です。王岐山はチャイナセブンの一員でした。習近平の盟友で、共産党幹部の汚職を摘発して恐れられていました。ところが最近は習近平と仲が悪くなり、敵に回ったようです。そこで習近平派は、ファン・ビンビンを締め上げて、王岐山の秘密を聞き出そうとしたようです。

共産党幹部と芸能界は昔から深い関係があります。毛沢東の四回目の妻だった江青は京劇の女優でした。習近平の妻の彭麗媛(ほう・れいえん)は、人民解放軍所属の超有名歌手で、いまでも少将の位を持っています。二人が結婚したときは、夫より妻の方が有名でした。CCTV(中国国営テレビ)の美人アナウンサーたちは、みんな共産党幹部と関係しているということです。

今回、当局から摘発された芸能人は、みんな習近平のライバルとつながっています。中国の芸能人の収入はハリウッド並みに巨額なので、脱税金額が大きく摘発しがいがあります・習近平派が芸能人の不正を摘発しているのは、習近平のライバルたちをやっつけるためです。

また、庶民とはかけ離れた豪華な生活をしている芸能人の不正を暴くことで、習近平が庶民を味方に付けようという目的もあります。

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