海外情報を遮断

中国は、今年に入ってパスポートの発行を大幅に制限し始めました。今年前半6カ月の発行数は2年前に比べて98%減の33万冊です。表向きは、中国人が外国に行ってウイルスに感染し、それを国内に持ってくるのを防ぐためだ、という理由からです。しかし、一時的に渡航を禁止するには、空港での出国を禁止すれば良いのであって、パスポートを持っているか持っていないかは、関係ありません。

中国はいま外貨が急速に減っているので、貴重な外貨が国外に持ち出されるのを防ぐために、恒常的に国民を渡航させないのが目的だと考えられます。しかしこれだけが理由ではないようです。

2012年から去年までの間に、60万人の中国人が亡命しており、今中国は亡命ブームになっています。

アメリカはパンデミックの影響で学生がアメリカに入ってくるのを規制していましたが、ワクチン接種が進んだので、外国人留学生の渡米規制を緩和しました。そうしたら、新学期の9月を前にして、中国の空港の出発ロビーには長蛇の列ができ、航空券の価格も上昇し、アメリカ行きの航空券代が10万元(170万円)を超えてしまいました。

中国は、政治的な側面だけでなく経済状況を見ても、どんどん悪化しています。そこで親たちは無理をしても子供をアメリカに留学させて、アメリカの永住権を取らせ、後から自分たちも子供を頼ってアメリカに移住することを考えているのです。このような亡命を防止するためにも、中国はパスポートの発給を厳しく制限しているのです。

中国人の海外脱出は、飛行機に乗ってアメリカに行くルートだけではありません。2019年の秋から、中国は東南アジア諸国との国境に壁を作っています。この壁は、ベトナム人・ラオス人・ミャンマー人が中国に不法入国するのを防ぐためではなく、中国人が不法に出国するのを防止するためです。

中国人の英語学習熱は、大変なものです。中国だけでなくどの後進国の野心的な若者も外国語の学習に熱心です。日本も明治維新当時の若者は、英語やフランス語を熱心に勉強していました。

鄧小平が改革・開放を初めてから、中国の大学では欧米思想や技術を伝える英文の書籍があふれました。1978年に北京大学に入学した李克強(今の首相)は手書きの英単語帳をポケットにいっぱい詰め込んで持ち歩いていたそうです。1982年に中国でテレビを持っている1000万世帯のほとんどがイギリスのBBC放送の英語学習番組を視聴していました。

今では、少しでも余裕がある親は、子供に英語を学ばせてアメリカに留学させ、遂には外国に移住することを望んでいます。共産党幹部のほとんどは、子供を海外に留学させ、その国の国籍を取得させています。習近平は娘の習明沢をハーバード大学に留学させ、アメリカ国籍を取得させました。このような具合で、中国の英語学習熱は大変なもので、全土にある英語塾では、1000万人の先生が英語を教えているそうです。

英語が分かるからこそ中国では金が稼げるのです。ところが、貧困家庭の子や文革を経験した中高年層ではアルファベットも知らない人も多いので、英語は中国社会の格差や不満の一因となってきました。

英語が分かると西側諸国の状況を知ることが出来、中国の現状への不満が高まります。また中国から脱出しようという動きが加速されます。中国では長い間の一人っ子政策で、両親と双方の祖父母も合わせて6人が、一人の子供の教育に莫大な出費をするようになりました。

逆に子供の教育にお金をかけるようになったので、子供をたくさん作れないようになり、出生率が大幅に減少しました。

このような問題を一挙に解決するために、中国政府は子供に英語を教えることを制限し始めました。上海市は、小学校の期末試験英語のテストをすることを禁止しました。この動きが全国に広がり、小学生や幼稚園児の英語教育だけでなく、英語学習全般が低調になっています。

その影響で、「アメリカ ウォール・ストリート・イングリシュ」という大手の英語塾が倒産しました。そして、全国の英語塾が倒産し、1000万人が失業するのではないか、と心配されています。

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