昨年の6月に、広東省の台山原子力発電所で事故がありました。この件はご記憶の方も多いと思います。この時、中国政府はまずは事故を隠しました。ところがフランスのアレバ社から外にもれました。アレバ社は台山発電所の30%の株主で、事故を収めようとして技術を保有するアメリカに助けを求めたため、これをアメリカのマスコミが嗅ぎつけたのです。
そこで中国政府もやっと事故を認めましたが、燃料棒の何本かに傷があったのが原因で、たいしたことはなく、放射能漏れも起きなかった、と発表しました。ところがこれがウソだったことが11月の末になって分かりました。
フランスのマスコミは、「台山のEPR型原子力発電所の燃料を格納する部屋(格納庫)の設計にミスがあったため異常な振動が起き、その結果燃料棒が損傷した」、と報じています。アレバ社はEPR型原子力発電所をフランスとフィンランドにも作っています。燃料格納庫の設計ミスだとしたら、フランスの原発も危ないのです。
フランスのマスコミが騒ぎ出したのは11月末でしたが、日本のマスコミは今でもこの事故の真相を報じようとしていません。その理由はよくわかりません。このように情報隠蔽をすると、それが暴露された時に、余計に原発に対する反発が強くなるのではないでしょうか。
日本が脱炭素に向かって、原子力エネルギーを活用しなければならない時に、このような事故が起きたのは、間が悪いとしか言いようがありません。原子力発電と聞くと、多くの人は「原発事故」「放射能汚染」を連想してしまいます。それは現在の原子力発電のやり方が、原子爆弾と同じ「核分裂」の際に生じるエネルギーを利用する方法なので、事故が起きると周辺に放射能をまき散らすからです。
しかしここで日本人は、たとえ事故が起きてもチェルノブイリ・福島・台山とは違って放射能を放出しない核融合型の原子力発電の技術が実験の段階に来ていることを、知っておくべきだと思います。
核融合式の原子力発電は、海水中に含まれている重水素(地球上に存在する水素の1/7000は重水素)とリチウムを取り出し、およそ1億度の高熱を加えて核融合を起こし、その時に発生する熱で発電する方式です。核融合の結果できるのは、ヘリウムですが、これは地球上に当たり前にある無害な元素です。
海水は日本にふんだんにあるので、原材料を輸入する必要はありません。核融合発電中に事故が起きても、核融合が即時に停止してしまうので、核分裂方式の原発のような核反応の暴走は起きません。また放射能が発生しないので、設備が爆発しても、放射能の問題は生じません。
以下はひと続きのシリーズです。