アメリカは、脱炭素が進めば石油利権が崩壊するので、一連の動きには消極的でした。しかし、国際的な脱炭素の流れが不可避になってきたので、この流れに逆らうと国際的に不利になる、と考えを変えつつあります。また、脱炭素が実現して化石燃料を使わない世界になっても、国際社会で主導的な立場に立とう、とも考え始めました。バイデン政権はこのようなことを考えているようです。
昨年1月、バイデンは、大統領に就任した直後に、ジョン・ケリーを気候変動担当特使に任命しました。彼は2004年の大統領選挙では、民主党の候補となってブッシュ(子)と戦い、オバマ政権の時には国務長官を務めた大物政治家です。それを気候変動担当特使などという軽い役職につけたので、多くの人が不思議に思いました。
彼は特使に任命された直後に中国を訪問しました。そこで多くの人は、彼はバイデン政権と中国の仲介役で、トランプ時代に悪化した両国の関係を改善するのが役目なのだ、「気候変動特使」というのはその隠れ蓑なのだと理解しました。彼は非常な親中派なのです。
しかし、バイデン政権が脱炭素を主導しようと考えているのであれば、ケリーが「気候変動担当特使」に任命されたことが納得できます。脱炭素技術の開発が出来るのは、アメリカ以外はEUと日本です。つまりEUと日本はライバルなのです。そこで中国と協力して脱炭素の主導権を握ろうとしたのではないでしょうか。その交渉役として、親中の大物政治家であるケリーはうってつけです。
COP26の最中の11月10日に、アメリカと中国は今後10年間の気候変動対策での協力を強化することを盛り込んだ共同宣言を発表しました。やはり米中が協力して気候変動対策をリードしようと考えているのは、間違いないようです。
スウェーデンの少女が騒いでいるとか、「地球は本当に温暖化しているのか」などという議論などは、あまり本質的なことではありません。問題の核心は、各国がエネルギーの自給を達成して自国の安全保障を確保しようとしていることです。そして、その主導権争いが始まった、ということです。
日本はもともと化石燃料を自給できませんから、この主導権争いに参加してエネルギー安全保障を確保する以外に選択肢はありません。再生可能エネルギーと原子力エネルギー確保の方向に行くしかないのです。
以下はひと続きのシリーズです。