早急に脱炭素を推進すれば、日本経済は破綻する

日本が脱炭素を実現してエネルギーの自給を達成し国家の安全保障を確保する方向に進んでいく際に、注意すべきことがいくつかあります。

国連が主導している脱炭素の枠組みは、先進国から途上国にCO2削減のための技術や資金を支援することになっています。日本は支援する側に立っているのですが、途上国にたかられないように、注意しなければなりません。特に中国も途上国で支援を受ける側に入っているということを忘れてはいけません。

CO2排出量を削減するには、莫大なコストがかかり、また時間もかかります。削減技術が確立されないうちに早急に火力発電所を廃止すれば、その国の経済が崩壊します。

菅首相は、2020年10月に首相に就任したときの所信表明演説で、2050年にCO2ゼロを実現すると宣言しました。では、これを実現するにはいくらかかるのでしょうか。杉山大志氏が『脱炭素は嘘だらけ』という本の中で書いているところでは、原子力発電を利用する場合は年間54兆円、利用しない場合は年間90兆円追加費用がかかるということです。日本の年間国家予算が100兆円ですから、その50~90%をCO2削減に使うということです。

杉山大志氏は、東大の物理学科を卒業し、いまはキャノングローバル研究所で研究する傍ら、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)という国連組織で働いています。そして、上記の試算は、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)という経産省系の研究機関が公表しているデータに基づいています。

日本はパリ協定の時に、2030年のCO2排出量を26%削減する(2013年比)と言いました。これを小泉進次郎環境大臣は、削減率を大きくして46%にすると宣言しました。この変更による増加コストは、年間20兆円になります。レジ袋セクシー大臣だけでなく首相も、CO2削減の技術的・経済的な実現可能性を全く考えておらず、思いつきで発言しているということです。

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