以下の数字は、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)という経産省系の研究機関が公表しているデータに基づいています。数字は、1KWH当たりのコストです。
石炭火力発電 9.3円(燃料代5.5円+設備費3.8円)
大型太陽光発電 11~13円
陸上風力発電 16円
浮体式洋上風力 36円
上記の数字だけでは、火力と太陽光の発電コストは2~3割程度の差しかないように見えます。しかし、太陽光は欲しいときに手に入るとは限らず、曇に備えて火力発電所を用意しておかなければなりません。
太陽光発電のメリットは、太陽が照っている時は石炭火力発電の燃料を節約できるということだけです。太陽光発電をしている時は、石炭火力発電所を休めていますが、その間も設備費は発生します。つまり、大型太陽光発電をすると、11~13円の発電コスト以外に火力発電所の設備費3.8円が追加され、合わせて14.8円~16.8円になるのです。
テロや災害に備えて予備の発電能力を持っていなければなりません。緊急事態なので、すぐに発電を開始できなければなりませんが、それが出来るのは火力発電だけです。どう頑張っても、火力発電は廃止できません。風力発電や太陽光発電を増やすということは、火力発電所や原子力発電所を遊ばしておく、ということです。
ドイツは、環境に良いはずの陸上風力発電の設置を減らしています。生態系や景観への影響、騒音などの問題が表面に出てきたからです。風が良く吹く場所に風力発電設備を設置すると、その付近の風が弱くなり、生態系が変わってしまうのです。
そこで洋上発電に切り替わっているのですが、海の上に設備の土台を作らなければならず、1KWHあたりの発電コストは、36円というとんでもないことになっています。洋上発電に切り替えれば、海の中の生態系が変わってしまうはずですが、陸上と違って生態系の変化が分からないので、それにはわざと目をつぶっています。
太陽光発電にしても、日当たりのよい斜面に太陽光パネルを敷きつめれば、その付近の日照が減り生態系が変わります。山の斜面の樹木を伐採するので、大雨の時に土石流が派生し巨大な環境破壊が起こります。風力であれ、太陽光であれ、再生エネルギー発電も環境を変えてしまうのですが、これには目をつぶり、火力発電だけをことさらに問題視しているのが、現状です。
結局、外国からの輸入に頼らない自前のエネルギーで、しかも安いものを確保する、ということが一番重要だ、ということです。それなのにメージが良いという理由で、政治家が再生可能エネルギーに飛びついています。発電事業は巨額投資なので景気浮揚対策になります。そのビジネスを狙って業者が群がり、利権が生まれるのです。
以下はひと続きのシリーズです。